出版社内容情報
平凡なパート主婦の祝子は人のオーラが「視える」からこそスピリチュアルを信じない。いんちきは分かってしまうからだ。が、繁華街で祝子の能力を見抜いた占い師に、職場で祝子にもオーラを視ることができない理学療法士に出会い、運命は足元から崩れてゆく。
【目次】
内容説明
彼はもう、私だけのものだ―巣鴨の治療院で受付のパートをする平凡な主婦の祝子は、人のオーラが「視える」からこそ巷に流布するスピリチュアルの類を信じていない。いんちきだとわかってしまうからだ。しかし夫の不貞行為に気づいた日、歌舞伎町のある占い師に自身の能力を見抜かれてしまう。さらには祝子にもオーラを視ることができない年下の理学療法士・優との出会いをきっかけに、運命は足元から崩れてゆく。
著者等紹介
高野史緒[タカノフミオ]
1966年茨城県生まれ。お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修士課程修了。1995年、第6回日本ファンタジーノベル大賞最終候補作の『ムジカ・マキーナ』(ハヤカワ文庫JA)で作家デビュー。2012年、ドストエフスキーの名作の続篇という体裁の幻想ミステリ『カラマーゾフの妹』で第58回江戸川乱歩賞を受賞。2024年、『グラーフ・ツェッペリン あの夏の飛行船』(ハヤカワ文庫JA)でベストSF2023国内篇第1位(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
138
超能力者を主人公とするSFの多くは、差別や迫害を恐れ逃げ隠れする苦しみを描く。よく当たる占い師として歌舞伎町で評判になった祝子だが、実は他人のオーラが否応なく視えてしまうテレパシストだった。名声を利用しようとする有象無象や悩みを抱えた客らに追われ、逃げ回る破目に陥る。通常のエンタメなら超能力を研究する組織か軍隊でも登場させてサスペンスを高めるが、あえて秘密が漏れていない設定で祝子個人の生まれ育ちに絡む秘密に集中する。本当に愛する相手を見つけ、彼のために逃げす生きようと決意する成長のドラマを成立させるのだ。2025/07/27
rosetta
29
★★★★☆好きな雰囲気の本。九龍城のような歌舞伎町構造体がある架空の新宿。幼い頃から他人のオーラが見える祝子(のりこ)は大学図書館司書の夫との二人暮らし。巣鴨の整体でパートをしているが、一回り年下の新入りの理学療法士優に惹かれる。優にも祝子に近い特別な力があるようだった。夫の浮気から自活の道を求め、特異な能力を活かして占い師になり抜群の成功を収める。オーラが見えること以外にはスピリチュアルについてはまるで否定的な所が面白い。抑制の効いた文章で、自分を探して足掻く祝子をじっくり観察するよう。2025/08/20
よっち
26
人のオーラが「視える」からこそスピリチュアルを信じない平凡なパート主婦の祝子。そんな彼女に平凡な人生から逸脱するきっかけとなる出逢いが訪れる物語。繁華街で祝子の能力を見抜いた占い師に、職場でいんちきは分かってしまう祝子にもオーラを視ることができない理学療法士との出会い。夫との破綻した結婚生活の中で起きた、提案された新しいキャリアへの道、そして理学療法士とのあいだに徐々に育まれていく絆があって、様々なスピリチュアルな事件にも巻き込まれて、意外な真相も明らかになる中、新しい生き方を選ぶ祝子の姿が印象的でした。2025/07/23
えも
24
オーラが視えてしまうために病院事務を辞めて占い師となった祝子は、女をつくった夫と離婚し、透明なオーラを持つヒーリング業の年下男性に憧れる。やがてヨガや新興宗教も絡んできて…▼少しSF要素はあるが、私の持つ高野史緒さんのイメージではない、何とも大人の小説▼いいんだけどね、いいんだけどさ、やっぱり高野さんの作品には、ムジカ・マキーナやカント・アンジェリコのような、この世の真実に触れて覚醒するような法悦を、感じたいじゃないですか、ねえ。2025/09/22
くさてる
21
スピリチュアルと科学と宗教が溶け込んだ物語世界のなかで、オーラが見える主人公がたどる運命の行き先が気になって気になって一気読みした。このラストは主人公にとって救いなんだろうか。迷いが無いという意味ではそうかもしれないけれど。とにかく面白かったのでおすすめです。2025/08/13