出版社内容情報
仕事はぼちぼちで、海外旅行なんて行けないけれど、ルームメイトと乾杯する小さなテラスはある──『フィフティ・ピープル』のチョン・セランが、明るい未来が見えない世界だからこそ、ささやかな希望を失わずに生きる人々をおかしみをもって描く、掌篇小説集
内容説明
恋人のアート作品の真意が理解できずにフラれた男が、美術館のバイトを始める「楽しいオスの楽しい美術館」。お気に入りの傘を大事にしながら、大量消費社会に抵抗する「アラの傘」。仕事はぼちぼちで、海外旅行なんて行けないけれど、家に帰ればルームメイトと乾杯できる。毎日の小さな楽しみを描いた表題作「私たちのテラスで、終わりを迎えようとする世界に乾杯」―明るい未来が見えない世界でもささやかな希望を失わずに生きる人々を、おかしみをもって描いたショートショートや詩を収録した作品集。
目次
A side(アラ;十時、コーヒーと私たちのチャンス;二十二時、奇跡の酔っぱらいサファリ ほか)
Centre(好悪;四人)
B side(マスク;ウユン;スイッチ ほか)
著者等紹介
すんみ[スンミ]
翻訳家。早稲田大学大学院文学研究科修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイティ
30
2011~22年まで、さまざまな媒体で発表された掌編や短編をまとめたもの。とてもとても良かった。何作も読んできたけど、たくさんの初めてのチョン・セランに出会った。あとがきにもあるが、長い小説よりストレートに、プラスにもマイナスにも彼女のエネルギーが伝わってくる。どんな時でもどこかに気楽さを抱えて腐らない、おかしいことはおかしいと声を上げる、そんなあっけらかんとした頼もしさに救われる。出会いについての話に光を当てられたら、という「スイッチ」が特に好き。これからもずっと読んでいきたい作家だと改めて感じた一冊。2024/12/08
星落秋風五丈原
18
本当に短いショートショート。エッセイっぽいものも。「ヒョンジュン」小野不由美『十二国記』や恩田陸『六番目の小夜子』も出てくる。全部ではないけど多く登場するキャラクターはアラ。2025/02/14
kibita
17
掌編・詩・短編集。チョン・セランさんは色んな分野から「招ばれて」フットワーク軽く、でも核心をついたような掌編を沢山書かれているんだ。それらを読めてファンとしてとても嬉しい。まるで映画ナイトミュージアムだなと思った短編はやっぱりオマージュでとても楽しかったし、韓国のミレニアル世代に対する搾取やトリクルダウン理論通りにはいかないという「アラの傘」も鋭い。1篇終わる毎に作家自身が綴る解説が良く、構成に緩急というかリズムがあって全体的に読みやすかった。2024/12/14
くさてる
16
初読みの作家。SFだったり恋愛だったりといろんなタイプの短編が収録されている。読みやすく面白かったけれど、このひとの芯の部分はどこなのかなと興味も沸いた。代表作を読んでみた方がいいのかな。2025/01/28
K1
14
いろんな媒体からの依頼で書いた短編をまとめています。一本一本が短いですが、短いが故に著者の想いがぎゅっとつまっています。2025/05/03