出版社内容情報
母親と再婚相手がわかってくれないと嘆く夢見がちな男の子、新婚の妻の理解不能な一面を知ってしまった夫、悩みをまったく分かち合えない恋人たち。不器用な人々が抱くさみしさを、温かな眼差しと幻想的な表現で描く、イギリス文学界の新星による傑作短篇集!
内容説明
身近なひととすれ違い、人生の行きづまりに悩むひとびと。その孤独を温かく想像力豊かに描きだす。作家、カズオ・イシグロを父にもつ新鋭のデビュー短篇集。
著者等紹介
ナオミイシグロ[ナオミイシグロ]
1992年イギリス、ロンドン生まれ。作家。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンにて英文学を学び、のちにバースの独立系書店で働く。その後、イースト・アングリア大学で創作を学ぶ。20代初めから数年をかけて書き上げたデビュー短篇集である本書『逃げ道』は、大手新聞“サンデー・タイムズ”や、著名な作家のニール・ゲイマンなどからも高く評価される。2021年に、初長篇小説Common Groundを発表。将来を期待される若手作家のひとり。父親は、ノーベル文学賞を受賞した作家のカズオ・イシグロ
竹内要江[タケウチトシエ]
翻訳家。東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
美紀ちゃん
77
カズオ・イシグロさんが好きなので読んでみようと思った。短編集。登場人物はどこかから何かから誰かから逃げている。みんな身近な人と一緒にいてもさっぱり理解し合えない。現実とファンタジーが入り混じっている。コーヒーを飲んで加速できるのはいいかも。訳者さんは初めての人で調べたら絵本などの訳が多い。読みにくいのは訳の可能性もあるかもと思った。土屋政雄さんだったらよかったかも。金原瑞人さん小野田和子さんなどの訳がとても好き。外国文学が面白いかは訳者の影響が大きいと思う。ナオミさんの写真、お父さんに似ていると思った。2023/11/28
fwhd8325
76
カズオ・イシグロさんの娘さんです。とてもユニークな短篇集です。6編の短編に3章からなる作品の組み合わせは、不思議な世界観です。特に異質ではありません。現代を描いているのに、どこかファンタジーの世界を感じさせます。何も父上様と比較する必要はありません。この作品で感いるように独特の世界観を持っていると思います。翻訳として表現の壁があるようにも感じましたが、そこに新しいセンスを感じました。長編も楽しみです。2023/10/30
アーちゃん
50
ノーベル賞作家カズオ・イシグロの娘、ナオミ・イシグロのデビュー短篇集。六編の短篇と間に入る連作中篇という構成。面白いのは解説にもあるが、『フラットルーフ』を除く全ての作品の主人公が男性又は男の子である事。そして全編を通して”逃げ道”を探している事。カズオ・イシグロとは全く違うダークファンタジーの世界、特に連作中篇の『ネズミ捕りⅠ』『ネズミ捕りⅡ 王』『ネズミ捕りⅢ 新王と旧王』はネズミ捕りの男と王の娘、父王亡きあと犬と森で暮らす新王の絡みが残酷だが希望があるラストで読み応えあり。2023/11/05
ヘラジカ
48
偉大なる親の名前を背負って同じ創作の道を歩むのはあらゆる面で困難を伴うに違いない。とは言ってもそれは読み手にとっても同じことで、全くのバイアスなしに評価するのはとても難しい。幸いにもこの作家のデビュー短篇集は父親とは作風が大分異なっていて、魅力も趣きも比較したくなるようなものではなかった。華々しい傑作デビューか、と聞かれると答えに困ってしまうが、どの短篇も良い意味で現代的であり、とても自由で意欲に溢れているように思う。いくつかの作品には個性と才能の煌めきを確かに見た。次作にも期待したい。2023/09/21
shikashika555
42
不条理。そして全てが浮き上がった感じを受ける。 きっと私が10代後半であれば好きになったに違いない。 何もかもが信用出来ない、何もかもがつくりごとに見える、自分は何とも繋がっておらずどこにも本当は属していない。かりそめに今の立場をかろうじてなけなしの努力で演じているに過ぎない。 そんな不安定で傷つきやすい思考を、かなり遠くから眺めるような読書体験だった。 50代半ばを過ぎて現実世界で案外図太く生きてしまっており、ここには手が届かない。 安心と同時に少し寂しいとも思った。2024/01/19