わたしたちが光の速さで進めないなら

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わたしたちが光の速さで進めないなら

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  • サイズ 46判/ページ数 304p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784152099860
  • NDC分類 929.13
  • Cコード C0097

出版社内容情報

廃止予定の宇宙停留所には家族の住む星へ帰るため長年出航を待ち続ける老婆がいた……冷凍睡眠による別れを描き韓国科学文学賞佳作を受賞した表題作、同賞中短編大賞受賞の「館内紛失」など、疎外されるマイノリティに寄り添った女性視点の心温まるSF7篇!

内容説明

打ち棄てられたはずの宇宙ステーションで、その老人はなぜ家族の星への船を待ち続けているのか…(「わたしたちが光の速さで進めないなら」)。初出産を控え戸惑うジミンは、記憶を保管する図書館で、疎遠のまま亡くなった母の想いを確かめようとするが…(「館内紛失」)。行方不明になって数十年後、宇宙から帰ってきた祖母が語る、絵を描き続ける異星人とのかけがえのない日々…(「スペクトラム」)。今もっとも韓国の女性たちの共感を集める、新世代作家のデビュー作にしてベストセラー。生きるとは?愛するとは?優しく、どこか懐かしい、心の片隅に残り続けるSF短篇7作。

著者等紹介

キムチョヨプ[キムチョヨプ]
金草葉。1993年生まれ。浦項工科大学化学科を卒業し、同大大学院で生化学修士号を取得。在学中の2017年、第2回韓国科学文学賞中短編部門にて「館内紛失」で大賞、「わたしたちが光の速さで進めないなら」で佳作を受賞し、作家としての活動をスタートした

カンバンファ[カンバンファ]
姜芳華。岡山県倉敷市生まれ。岡山商科大学法経学部法律学科、韓国梨花女子大学通訳翻訳大学院卒、高麗大学文芸創作学科博士課程修了。大学や教育機関、韓国文学翻訳院日本語特別課程・同アトリエなどで教える

ユンジヨン[ユンジヨン]
尹志映。韓国ソウル生まれ。延世大学校英語英文学科、日本学卒。東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻修士・博士号取得。韓国文学翻訳院日本語特別課程修了、同アトリエ10・11期生(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

みっちゃん

171
とても私好み。ほぼ全編の主人公が女性。遥か未来に人類が獲得するかもしれない技術を描きながらも、柔らかな文章は妊娠や出産、我が子との相剋、そして他者を理解し受け入れる事とは、という問いを読者にかけてくる。独特の空気感が導きだす切なくも余韻を残すラストがたまらない。1番好きなのは表題作。朽ち果てた宇宙ステーションでコールドスリープを繰り返しながら、老女が待っているのは到達する手段が失われてしまった、夫と息子の住む遠い遠い星へ向かう宇宙船。「わたしには自分の向かうべき場所がわかっているよ」思いが溢れる。2021/04/07

buchipanda3

118
ゆるやかな語り口に乗せられるように、あれこれと人というものについての思案がすぅーっと駆け巡る。その揺らぎが結構読後に残った。それも穏やかながら叙情的な味わいに包まれながら。多くの先端的な技術が散りばめられた近未来社会が描かれるSF短編集だが、理屈ではない何か、人の素の有りようを思い出させられるような感覚がどの篇からも感じられた。テクノロジーの進化はむしろ人本来の割り切れないアナログな感性を露わにするものなのかも。感情を物性化するという発想が面白かった。あとサイボーグ化おばさんの解放感は何か分かる気もした。2021/03/25

Apple

105
表題作は、宇宙の果てしない距離を感じさせる作品でした。壊れた宇宙ステーションにいるたった一人の老女の心の内が、なによりも宇宙に隔たれたことによる孤独を表現していて印象的でした。「わたしたちが光の速さで進めないのなら、同じ宇宙にいることにいったいなんの意味があるだろう?」宇宙開拓の進んだ世界の孤独を象徴するようなセリフだとかんじました。宇宙生命体と人類の関係に迫った「スペクトラム」「共生仮説」もすごい。科学の進歩、宇宙への進展が人の感情や性質をいかに具体化、顕在化するか、考えさせられました。2021/10/09

星落秋風五丈原

105
スペースデブリの廃棄回収業者が、もう閉鎖されて何年も立つステーションから一向に立ち退こうとしない女性科学者アンナのもとを訪れる。アンナはかつてコールドスリープ技術を研究しており、夫と子供を先に惑星スレンフォニアに送ってから自分も続くつもりでいたが、ある事情により惑星へのルートは閉ざされてしまった。近未来の話ながら、効率第一主義の体制側と、声の小さい庶民が常にその犠牲になる現代社会の姿も垣間見える。「わたしたちが光の速さで進めないなら」2020/12/27

ひさか

95
2020年12月早川書房刊。巡礼者たちはなぜ帰らない、スペクトラム、共生仮説、わたしたちが光の速さで進めないなら、感情の物性、館内紛失、わたしのスペースヒーローについて、の7つの短編。着眼点が面白く、展開が楽しい。表題作は、素敵なタイトルで表される世界の問題を極めてプライベートな解決で締めくくり、肩すかしとも取れる面白い結末でまとめてある。他の作品も同様に作者の視点が楽しいファンタジーよりの短編集だ。ただこういう傾向ばっかりというのもよくなくて、次作でどういう話を出してくるかが楽しみなところです。2021/01/26

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