出版社内容情報
36歳で末期がんと診断された脳外科医。残された時間は短い。でも、生きる希望は捨てない。やがて彼は小さな奇跡を起こしてゆく。36歳、医師、末期がんと診断される。手が届きかけた未来が消えた。それでも、希望とともに生きたい。医療現場への復帰をめざし、子供を望み、死の直前まで書いた。限りなく前向きな生の記録を。
ポール・カラニシ[カラニシ ポール]
田中 文[タナカ フミ]
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Rie【顔姫 ξ(✿ ❛‿❛)ξ】
38
心揺さぶられる読書だった。著者のポール・カラニシ氏は、若い頃から死について考え続け、スタンフォード大学で文学を学んだ後、エール大学のメディカルスクールを優秀な成績で卒業、米国の医者のなかでも最も優秀な学生が志す脳神経外科の研修期間をまさに終えようとしていたときに、がんと宣告される。医師として多くの救えない患者に接してきた経験があり、死について多くを考えてきた著者にとっても、自分自身の病気の宣告は全く違うものだったと語っている。これは、死と闘って打ち勝ったという話ではない。(続2017/08/11
くさてる
28
36歳の前途洋々たる脳外科医が末期がんだと診断された。かれが振り返るこれまでの人生と、これからの人生への思い。医師であるからこその視点と患者としての視点の揺れや、医学への思い入れがぐいぐいと伝わってくる、熱いハートに冷静な頭脳を持っている人だったんだなと思った。泣けるとかそういうレベルでなく、己の人生というものと否応なく向き合わざるを得なくなったとき、人はどうするのかという本でもあると思います。良かったです。2020/06/13
ふぇるけん
17
プロローグはある脳外科医師が末期ガンを示す画像を見ているところから始まる。そしてその画像は彼自身のものであった…そんな状況に陥ったときの気持ちなど想像できないし、したくもないのだが、彼は医師と患者の境界をさまよい、病状の変化に安心したり絶望したりを繰り返しながらも、冷静に自分自身の人生を見つめていく。著者が最後まで書くことができなかったエピローグを著者の妻が引き継いだ文章が素晴らしく、深く心を打たれた。2017/07/24
Yoko
12
出版社さんからゲラ版を頂戴して読みました。死というものに科学の立場で触れてきた筆者が、現実に生と死の狭間に立つことになって見えたもの。そしてそれを言葉にしようとする強く悲壮な決意。決して感傷に走ることなく、伝えなくてはという思いがズンと響く。筆者は自分を末期ガン患者としてではなく、人として何で形作られているかをしっかり伝えてくれている。だからこそより強くそのメッセージが迫ってくる。2016/11/24
Yuko
10
文学と医学に生きる意味を見出そうとした医師と、彼の意思を尊重し最期までサポートした家族と担当医師。2章までは自身が病と闘いながらの執筆。妻が3章を引き継いだ。2章の最後 娘へのメッセージと、3章 妻から見た夫についての記述も胸を打つ。 自分では見えにくいが、他人から見れば彼の生きた意味は明らか。意味を見出すのは案外自分以外の人なのかもしれない。それぞれのかけがえのない意味を。 2017/03/01