出版社内容情報
浜辺に流れ着いた日記を見つけたカナダの作家ルース。東京に住む女子高生が書いたその日記に、ルースは次第に引き込まれていくが……時間も場所も超えて人々の物語が絡み合う壮大な文芸大作登場
内容説明
カナダの島に暮らす作家ルースは、海岸に打ち上げられたハローキティの弁当箱を見つける。中に入っていたのは、古びた手紙と腕時計、そして日記だった。日記の持ち主は、東京の中学生ナオ。彼女が書き記す日々の話に、ルースは次第に引き込まれていく。しかし、いじめに苦しむナオは自殺をほのめかす…カナダと日本、現在と過去で響きあう時間と存在。深い思索と笑いと哀しみに満ち、世界を虜にした壮大な物語。
著者等紹介
オゼキ,ルース[オゼキ,ルース] [Ozeki,Ruth]
アメリカのコネチカット州で、アメリカ人の父と日本人の母のもとに生まれる。スミス・カレッジにて英文学とアジア研究で学位を取得したのち、文部省の留学生として奈良女子大学大学院で日本古典文学を学ぶ。1985年に帰国し、ホラー映画やテレビ番組の制作を経て、映画を撮りはじめる。手がけた映画作品は各地の映画祭で上映されるなど高い評価を受けた。1998年にデビュー長篇『イヤー・オブ・ミート』を発表し、大型新人として注目を集める。2010年に曹洞宗の僧侶となる
田中文[タナカフミ]
東北大学卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Willie the Wildcat
50
張り詰めた糸と齎す影響。物理的・時間的隔たりを埋める展開に、日米二家族の静的葛藤を重ねる。ハルキを通した生死観を踏まえたジコウの悟りが光。お腹の魚・・・。そのジコウに惹かれた日系人ルース。亡き母を頭の片隅に、ある晩の尼僧の夢。正に”Time Being”の始まりという感。鯨に垣間見る過去への哀愁もその一端。一方、少なからず日本の歴史・文化に偏ったコメントが垣間見れるのは、著者の意図的なモノのかどうかも気になるところ。下巻へ。2017/09/23
昼夜
27
仏教はアジア、自分の国に根ざしたものなのになぜか日本人目線だと右耳から左耳へ抜けていくのに、外国の人に語らせるとストンって心に落ちてくる言葉になるのが不思議。2014/05/23
かんやん
15
日本の女子中学生ナオの日記(と、特攻隊だった彼女の大伯父が遺した手紙)をカナダの海辺で拾ったルース(著者と同名)。過去から流れついた日記を読みながら、しだいに思いを寄せてゆき、ナオの消息を調べ始める。いじめ、アキバ、オタク、特攻隊、禅等々、ここに現れる日本は記号的すぎるではないか、ととりあえず指摘することができるだろう。15歳の日記(過去)のなかで道元とプルーストと量子力学が出会うというのも、作為的すぎる、とも。それでも、ルースの視点(現在)を介することで、ひどいいじめに会う少女が生命を持ち始める。 2017/08/23
りつこ
11
胸が痛くなるような物語だ。続きが気になる。下巻へ。2014/06/15
ソングライン
9
カナダの小さな島で暮らす小説家ルースは海岸に打ち上げられたプラスチックバッグを見つけ、その中には古い腕時計とフランスがで書かれた手紙、そして新しく日本語で書かれた日記をみつけます。日記はアメリカから日本に帰国し酷いいじめを受けている中学生ナオのものでした。職を失い自殺願望の父、104歳になるも東北の小さな寺の住職を務める曾祖母ジコウ、彼女の息子で戦時中特攻で亡くなった大叔父ハルキ、異なる場所と時を生きる人々に次第に魅せられていくルース。この先物語は何処へ行くのか、下巻にすすみます。2025/03/17