内容説明
三十歳前後と見られる若い女と生後一年ほどの幼児の遺体が発見された。犯人の少年に死刑判決が下されるが、まもなく夫が手記を発表する。「妻はわたしを誘ってくれた。一緒に死のうとわたしを誘ってくれた。なのにわたしは妻と一緒に死ぬことができなかった。妻と娘を埋める前に夜が明けてしまった。」読者の目の前で世界が塗り替えられる不穏な“告白”文学。
著者等紹介
横田創[ヨコタハジメ]
「(世界記録)」(2000)で第43回群像新人文学賞を受賞し、『裸のカフェ』(2002)で第15回三島由紀夫賞候補となる。『埋葬』が初の書き下ろし長篇(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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三柴ゆよし
10
芥川「藪の中」のオマージュ。途方もない饒舌のなかに真相は埋葬される。そもそも「わたし」の目に映る「あなた」とは結局のところ「わたし」でしかありえないのだから、「あなた」の数だけ「わたし」はいて、そうとはわかっていても「あなた」を求めつづける「わたし」。口寄せ巫女こそ出て来ないが、すべての登場人物がそれこそ口寄せ巫女みたいなもんで、悲劇にはちがいないのだけれど、その反面、かなり薄気味悪い小説であった。ひさしぶりに現代小説らしい小説を読んだら、なんだかどっと疲れた。2010/12/02
163
5
物凄い本。死体が発見されて少年が捕まって殺された女性の夫が自分が埋めたと手記を発表して・・・ただそれだけ。真実とかそんなのは関係なくて言葉が言葉が言葉が!!なんだかよくわからないまま終わったけどそれでいいのです。とにかく凄い本。好きじゃないけど圧倒された。好き嫌いがはっきりしそう。この作者さんはたくさんの人に愛されるんやなくて少数の人に熱狂的に支持されるんやないでしょうか。2011/02/04
猫のゆり
5
独特の会話が頭にこびりついてしまいそう。悪夢の中を漂っているような。読後感の悪さも半端ない。いや、好きですが。2011/01/19
ハルト
5
被害者、加害者、遺族。登場人物全員がぶれにじみ、世界は多重で混沌とし、言葉に概念にまといつかれる。自我も彼我もなくなり、すべては同化する。闇に絡めとられるかのような重さ不穏さ残る小説でした。コールタールの海でもがいているような閉塞感。息苦しさ。あると思っていた地面が崩壊していて深い穴の中へと真っ逆さまに落ちていく。皆が皆、途方に暮れた子供のようでもあった。星野智幸さんの「俺俺」をちょっと思い出した。2010/12/16
conegi
4
いつの間に読みたい本リストにあり、かつ中古で妙にプレミア価格になっていたため図書館より借りて読了。なんとも感想の難しい本だ。親子の変死体が見つかり犯人の少年が捕まり、夫が手記を発表と、粗筋だけ見るとミステリーのようだが、独白文というか取り留めのない文が続くかのよう。それでも後半からは妙に惹き付けられて読んでしまった。しかしどこが面白いのか考えてもよくわからないのだけど。哲学書などの引用もあり、ストーリーを楽しむというよりは哲学書的な感じなのか?2021/07/24