内容説明
16世紀中国、明王朝末期、ときの皇帝、正徳帝は暗殺を恐れて、四人の影武者を引き連れて、すべての行動を行なっていた。「五札の君」と呼ばれる彼らは、帝とその完璧な複製であり、皇后や側近でさえ、見分けがつかないほどであった。ある日、帝の寵愛する天文学者が新星を発見する。学者によると、この星は国の破滅の前兆を示しているという。先帝に倣い、都を離れて凶星の消失を待つことにした帝は、南方へ狩猟の旅に出発する。帝ら五札の君を乗せた巨大な船には、三百人の宮女を娼婦にした色街が再現されており、道中「孔子の空中曲芸」なる奇妙な行為が行なわれていた。その行為を行なっているのは帝なのか、それとも、影武者なのか…?パリ在住中国人作家の著者が、明王朝滅亡の要因をつくったとされる第11代皇帝の人生を、虚実ないまぜて描いた艶笑譚。
著者等紹介
ダイ・シージエ[ダイシージエ]
1954年に中国福建省で医師の両親のもとに生まれる。1971年から74年まで、下放政策により四川省の山岳地帯で再教育を受けた。解放後、1984年に国費留学生としてパリ大学に留学、美術史を専攻し、その後、フランス国立高等映画学院で映画を学んだ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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星落秋風五丈原
26
あまりに途方もない内容だったので主役である明の正徳帝を検索すると国を傾かせた暗君だったらしい。「舟から落ちて亡くなった」という史実はそのままに凶星を避けるために宮殿を出て宮女300人と舟の旅に出る様を描く。英米ならばロードムービーで成長や出会いを描くところが中国ではひたすらセックス。確実に48手以上のテクを試し孔子様の名前を体位につけるなんて恐れを知らないのか中国人。かといって動物絡みのネーミングも変だぞ。というかそんなものいちいち研究するのか。但し影武者を配した理由については同情の余地も。艶笑譚。2015/11/04
藤月はな(灯れ松明の火)
22
明のルイートヴィッヒ、若しくは北条高時とも言える正徳帝と影武者達との、死の司る凶星を避けるために送られる性ロードムーヴィー。表題の意味は性交時の体位名です。春画かよ!阿片に耽溺するがために正徳帝と自我同一化していく影武者や影武者とお忍びを楽しんでいた正徳帝がアイデンティティが揺らぐ所が中々、興味深い。でも孔子絡みの体位名や交尾している犀を「卑しい畜生の罰当たりめ!」と攻撃する、野外で排泄する少女もどうかと思う(笑)2017/06/01
三柴ゆよし
20
明朝の皇帝・正徳帝とその完璧な模倣である四人の影武者(五札の君)を主人公にした歴史奇想小説。細密描写が苦手な人(私のことである)には辛いが、個人的にはミルハウザーよりも洒落が効いていて好きかもしれない。白眉というべきは、夫婦の犀がつがう前で狩人姿の官女たちが自慰をはじめ、喜悦した皇帝が彼女らの前で中国四千年の房中術の奥義を講義するシーンとそれに続く動物たちの性の供宴。そんなのを延々数十頁にわたって、ボルヘスもかくやの博覧強記、ラブレーばりのハイテンションでやられた日には、頭もおかしくなるってもんだ。怪作。2012/02/10
ネロリ
8
“艶笑譚”と確かに書いてあった。読みながら、先日読んだ山尾悠子氏のあとがきにあった澁澤龍彦氏の引用「明確な線や輪郭で、細部をくっきりと描かなければ幻想にはならないのだということを知ってほしい。」という言葉を思い出していた。幻想的な本書の描写は、細かい。そしてあちこちに移る。帝に寄り添い、血を求める蚊となり、物語の著者として読者に語りかけ、性の競技の参加者たちの悲しく滑稽な姿を並べ、ラブレーの碗が過去を垣間見せる。子供のような帝が、きちんとコメディしている。2012/03/05
かしこ
2
主人公である中国の皇帝には4人の影武者がいて、誰が皇帝かわかないように5人の集団で皇帝としてうろうろして、後宮の美姫達と「無精な孔子さまがお好きな遊戯」とか「けちな孔子さま」とか体位について語り、アクロバティックな性行為をしていた…滑稽な性の物語で、残酷性もありながら軽く、夢のような物語だった。
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