内容説明
1940年代、次第に狂気を暴走させるナチスドイツ。SS将校アルベルトはユダヤ人虐殺部隊と怖れられた特別行動隊の任務に赴き、この世の地獄を見る。一方、司祭を志していたマティアスも衛生兵として召集された前線で、自らの無力を噛みしめていた。地獄の底で再会した二人は、思わぬ共通の目的の下、ローマを目指す。その先に待つのは、絶望か、希望か。心を揺さぶる衝撃の結末が待つ歴史ロマン巨篇完結。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆみねこ
78
何と切ない終わりなのでしょうか。戦争が、ナチスという狂気がなかったなら、アルベルトとマティアスの運命はこのような形にはならなかったのに。宗教者も人間であり、保身と欺瞞があふれている。イルゼとアルベルトの愛が悲しかったです。みなさんの感想を読むと、ここから「革命前夜」につながるのだとか。一度手にして期限切れで挫折したので、また機会を得たら読んでみたいと思います。須賀さん、すごいなぁ。。2016/11/24
たか
53
こんなに重くて骨太な作品を読んだのは久しぶりです。宗教的倫理観、人の命、戦争、ユダヤ人とナチズム、歴史小説、スパイ小説、ミステリー要素、人間ドラマと、様々なテーマが絡み合い、筆者の熱い思いが感じられる作品です。 アルベルトとマティアス、二人の対称的な人生の裏側がラスト100ページで明かされます。その隠された真実に衝撃を受けますが、アルベルトの最期の一言によって、全てを納得させられます。A評価2018/05/27
K
52
第二次世界大戦のドイツをナチスと聖職者の幼馴染の2人を通して描いてる。重い内容で長くて少し時間がかかったけど戦争の悲惨さに翻弄される人々の姿が良く描かれていると思う。2017/06/16
藤月はな(灯れ松明の火)
50
戦況によって奪われていく命と残虐に直面して鈍麻する心。神に救われたいと願っても形式によって秘跡が施せないマティアスの苦悩と心を病みそうな部下と多くの人間を殺さないために自らが咎を背負ったアルベルトのブレなさに胸が詰まります。その後のナチ幹部の逃亡をバチカンが手引きしていたという仄めかしとある人物の懺悔は奪われてしまったものを思うとあまりにも遣る瀬無い。どこにも責任はない罪。アルベルトは最後まで自らが捨てた神や彼を愛した人からの救いを拒んだ。そしてあの最後の一文は心に打ちこまれた棘としていつまでも問い続ける2013/07/25
miyu
35
とても重く難しい本だった。歴史の嘘と真実に対する作者の知識の深さを感じる圧巻の著述だが、それゆえ人間ドラマを純粋に味わい感動する気持ちを妨げられた。作者には書きたいことが多すぎたのだろうか。たとえば1巻をアルベルト、2巻をマティアスの視線からというようにして、ラストで二人を対峙させる手法の方がもっと物語に入り込めたと思う。多くの伏線が回収されたが、それがほとんどラスト近くでの各人の告白からという反則技に呆然とした。絶賛する感想の声の中このようなコメントで恐縮だが、作者の熱意だけはしかと感じたと言い添える。2017/01/23
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