内容説明
ボクの母ちゃんの頭の中は12才だ。小学生の時に交通事故にあってから記憶力がすっかりダメになって、それ以降のことはほとんど覚えていられない。「忘れんぼノート」にメモして覚えておこうとするんだけど、2、3日で忘れてしまう。障害をもった人たちが働くパン屋さんで働いてるから、学校でからかわれたりするけれど、ボクはぜんぜん気にしてない。そんなふうに毎日を過ごしていたある日、母ちゃんの行方がわからなくなってしまって…もしも、もしもなにかあったら…人生という長く険しい道を、母、息子、父の3人で、寄り添いながら歩んで行く、せつなく温かな家族の軌跡。
著者等紹介
渡辺やよい[ワタナベヤヨイ]
東京都生まれ。早稲田大学在学中に「マディソンはずれのほのかな反乱」が『花とゆめ』に掲載され、漫画家デビュー。2003年、小説「そして俺は途方に暮れる」でR‐18文学賞読者賞を受賞。その後、小説誌等で執筆活動を展開している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
紫綺
55
第一章は普通に、お母さんの設定が少々レアだったものの感動物の定番的始まり。ところが第二章から次々とショッキングな展開へ。それでも…それでも、親子は強い絆を結んでいく。記憶って、良かったことも悪かったこともひっくるめて人生なんだ、と思う。2011/12/23
あつひめ
48
奇跡のような出会い方をすることもあるのかと驚きとこれからの事を思い描いた。記憶障害に陥ってしまった琴音。皮肉なことに辛い思い出だけは記憶の中に深く刻まれている。まさか、その中に愛する人が居たとは。病を持つ家族を支えるのは並大抵なことではない。物語に限らず現実の世界で多くの人が毎日心をすり減らしながら暮らしているかもしれない。周りの人の手助け、そういうものがあれば少しずつでも親子、周りの環境も変化するのかもしれない。夫、涼の背負う十字架、その重さを息子の未来はいつか受け止めなければならないのがとても心配。2012/01/25
まど
45
読書メーターで教えていただいた本。忘れたくないことを忘れてしまって、忘れたいことを覚えているのがつらいですね。でも忘れていないからこそ築けた関係もあると思うしそれぞれの愛情は本物だと思うので、より深い絆が築けるといいなと思いました。息子さんが真相を知ったときの気持ちを考えると切ないですね。その後が気になります。2012/02/03
キキハル
43
11歳の未来と夫の涼、そして記憶障害のある妻の琴音。彼女は12歳の時に事故にあって以来、新しい出来事が覚えられない。三日もすれば忘れてしまう。そんな家族三人の心温まるお話、だと思っていたらちょっと違う。楽しく幸せなことは忘れて、辛く悲しいことは覚えている琴音が抱える秘密。幼い頃から叔父の世話になっている涼が言えない秘密。その上に積み重ねられた幸せ。私は忘れない。あなたも忘れない。口にもしない。不幸になる真実なら知らない方がいいから忘れたふりをする。うそつきな私。うそつきなあなた。そんな深い余韻を残す一冊。2012/01/11
銀河
43
読メの感想で興味を持って。よかったよ〜おもしろかったよ〜いい話だったよ〜。息子、母、父の各章どれも読みごたえあり、一人一人の思いが伝わってきた。せつない〜悲しい〜と読んでいたら、父の章でびびびびっくりした!やるせない辛い気持ちでいっぱい。とても素敵な家族の話だった。もっともっと強い絆で結ばれ、この一家の幸せが続くことを願っている。2011/12/28