内容説明
科学文明と無縁に育った青年が天空にのびる“天橋立”で出会った女の子は、とびきり可愛い宇宙旅行の案内係だった―無垢な若者が初体験するめくるめく恋と大気圏離脱を描いた表題作、“ロボット工学の三原則”の間隙を突く「灰色の車輪」、男女の権利格差が逆転した社会の秘密を描く「性交体験者」、異星人との驚くべき最悪のコンタクトが語られる「三〇〇万」等、バラエティに富んだアイデアを論理的に突き詰めた、全8篇収録の奇想SF博物館。『海を見る人』に続く傑作ハードSF短篇集。
著者等紹介
小林泰三[コバヤシヤスミ]
1962年京都府生まれ。大阪大学基礎工学部卒。同大学院基礎工学研究科修了。1995年、「玩具修理者」が第2回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞してデビュー。以後『人獣細工』『肉食屋敷』などの作品集で、緻密な論理とグロテスクなイメージを特徴とするSF・ホラー短篇の名手としての評価を確立した。2001年発表の長篇『AΩ』、2002年発表の短篇集『海を見る人』(ハヤカワ文庫JA)で、日本SF大賞に連続ノミネート(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
JACK
26
○ 表紙がラノベみたいだが内容はハードなSF短編集。軌道エレベータが作られ、忘れ去られた未来を描く「天体の回転について」、ロボット工学三原則を巡る悲劇「灰色の車輪」、女性が圧倒的に優位な未来で男性が生贄になるグロテスクな物語「性交体験者」、火星の人面岩を調べるため宇宙飛行士になった女性が体験するファーストコンタクト「銀の舟」、科学が進歩した星の戦闘民族を描く「三〇〇万」、記憶を外部メモリに保存する未来の殺人鬼を描く「盗まれた昨日」など、一癖もニ癖もある作品集。個人的には「灰色〜」と「銀の舟」が好み。2017/08/21
おすし
23
はぁい。わたし、案内係のスッシーでぇす♥表紙の萌え萌えラノベ感で手に取るのを躊躇していたの?あらあら。そんな消極的なことじゃだめよ。スッシー怒っちゃう。ぷんぷん♥『天体の回転について』はとってもゴリゴリにハードSFよ!わからなくてもファンタジーとして楽しめばいいんだって、ヤスミンが言ってた♥全部とにかく凄ぉい短編集なんだけど、特にお気に入りは『時空争奪』!河川争奪を“世界”に当てはめちゃった、ヤスミンならではのぶっ飛びアイデアの傑作ね!ん?イライラしてどうしたの?ごめん。何言ってるか、全然わかんない♥2022/01/30
P太郎 ̄(=∵=) ̄
11
表紙のかわいらしさに少し気を許して読んだけど、分かりやすく説明してくれてることすら理解が追いつかない…( ;∀;)。SFを読むのが久しぶりすぎて、映画で観るのと違ってひたすら理論を考えたり突然アクションが始まったりで頭の中が忙しかった💦奇想天外な短編がいっぱい、グロいのも入ってます。最初の「天体の回転について」エレベーターガールのリーナちゃんのかわいさにつられて、あの後どうなるのかな…。2022/02/20
ミツ
10
いつもどおりの小林泰三。精緻な物理法則のなかにエロ、グロ、萌え、ホラーをごたまぜにぶち込んだまさしく闇鍋のような短編集。萌え萌え軌道エレベーターガールに某ヤサイ人っぽい戦闘民族型侵略者に這い寄る混沌という面々の悪ふざけっぷりがなんとも愉快だが、どの作品もニュートン力学やらロボット三原則やら時間やら記憶を取り扱ったゴリゴリのハードSFである。もちろんそんな堅苦しいことを抜きにして奇想満載のファンタジー小説として読むことも可能だけれど。表題作「天体の回転について」と「時空争奪」が特に良かった。2014/03/08
Gemi
8
小林泰三さん、やっぱり最高に面白かった。4年前に亡くなられたのが悔やまれてならない。一冊一冊読み終える度に残りの楽しみが減るのが口惜しい。この作品、装丁の絵に目を疑う。この感じで小林泰三?しかし読み始めるとやはりヤスミン。どの話も著者らしい8篇のSF短編集。最初の表題作と最後の物語以外がバラエティに富んでいてむちゃくちゃ面白かった。ロボット工学の三原則に基づく恋愛とAI、未来の創作ミステリ小説、更には叙述トリック、記憶破断者でも描かれた前向性健忘症用のメモリ、等々盛りだくさん!さすがヤスミン!最高でした!2024/10/17