内容説明
小説家アラスター・グレイは、グロテスクな装飾が施された一冊の書を入手する。『スコットランドの一公衆衛生官の若き日を彩るいくつかの挿話』と題されたその本は、19世紀後半の医師による自伝だった。それは、実に驚くべき物語を伝えていた。著者の親友である醜い天才医師が、身投げした美女の「肉体」を救うべく、現代の医学でさえ及びもつかない神業的手術を成功させたというのだ。しかも、蘇生した美女は世界をめぐる冒険と大胆な性愛の遍歴を経て、著者の妻に収まったという。厖大な資料を検証した後、グレイは小説家としての直感からこの書に記されたことすべてが真実であると確信する。そして自らが編者となってこの「傑作」を翻刻し、事の真相を世に問う決意をした―。虚か実か?ポストモダン的技法を駆使したゴシック奇譚。ウィットブレッド賞、ガーディアン賞受賞。
著者等紹介
グレイ,アラスター[グレイ,アラスター][Gray,Alasdair]
1934年、グラスゴー生まれ。スコットランドを代表する小説家。画家、劇作家、脚本家としても活躍している。美術学校在学中に執筆をはじめ、三十年近い年月をかけて完成させた長大な処女長篇『ラナーク 四巻からなる伝記』(1981)がアントニイ・バージェス、ブライアン・オールディスらから絶賛され、一躍母国のみならず英文学における主要作家となった。1992年発表の『哀れなるものたち』は長篇第六作にあたり、ウィットブレッド賞、ガーディアン賞をダブル受賞
高橋和久[タカハシカズヒサ]
東京大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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