内容説明
山寧大学の楊教授が、脳卒中で倒れた。夫人はチベットに赴任中、娘の梅梅は北京で医学院受験に追われている。愛弟子で梅梅の婚約者でもあるぼくは、学部を取り仕切る彭書記から教授の付き添いを命じられた。病床で教授はうわ言を口走り、高潔で尊敬を集める人とは思えぬその言葉にぼくは驚く。どうやら経費の問題、不倫の疑い、何者かにゆすられている節もあった。意識の混濁する教授に翻弄され、迫る大学院入試の準備もできず、ぼくの苛立ちは募る。どんなに学問を究めても役人より格下でしかないと、学者の人生を悔いる教授の激しい憎悪と惨めな姿を目にするうちに、ぼくは自分の進路に疑問を抱く。そんなぼくを梅梅はなじり、去っていく。折りしも北京では自由を求める学生が続々と天安門広場に集まっていた。すべてを失ったぼくは北京へ向かうが…。全米図書賞受賞作家が天安門事件を題材に、非情な現実に抗う人間の姿を描く渾身の書。
著者等紹介
ハジン[ハジン]
1956年、中国遼寧省生まれ。人民解放軍に6年間在役。1985年に渡米、ブランダイス大学で英米文学の博士号を取得。ボストン大学でも創作を学ぶ。英語で書くようになって10年あまりで書いた『待ち暮らし』で1999年の全米図書賞、2000年のPEN/フォークナー賞に輝くという快挙を遂げ、同書は世界的ベストセラーとなった。短篇小説集では、Under the Red Flag(1997)でフラナリー・オコナー賞、Ocean of Words(1998)でPEN/ヘミングウェイ賞、The Bridegroom(2000)でアジア・アメリカ文学賞を受賞している。現在はボストン大学で英文学の教鞭を執るかたわら、旺盛に執筆活動をつづけている
立石光子[タテイシミツコ]
大阪外国語大学英語科卒、英米文学翻訳家
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キムチ
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umeko
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星落秋風五丈原