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狂気

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  • サイズ B6判/ページ数 345p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784152085900
  • NDC分類 933
  • Cコード C0097

内容説明

山寧大学の楊教授が、脳卒中で倒れた。夫人はチベットに赴任中、娘の梅梅は北京で医学院受験に追われている。愛弟子で梅梅の婚約者でもあるぼくは、学部を取り仕切る彭書記から教授の付き添いを命じられた。病床で教授はうわ言を口走り、高潔で尊敬を集める人とは思えぬその言葉にぼくは驚く。どうやら経費の問題、不倫の疑い、何者かにゆすられている節もあった。意識の混濁する教授に翻弄され、迫る大学院入試の準備もできず、ぼくの苛立ちは募る。どんなに学問を究めても役人より格下でしかないと、学者の人生を悔いる教授の激しい憎悪と惨めな姿を目にするうちに、ぼくは自分の進路に疑問を抱く。そんなぼくを梅梅はなじり、去っていく。折りしも北京では自由を求める学生が続々と天安門広場に集まっていた。すべてを失ったぼくは北京へ向かうが…。全米図書賞受賞作家が天安門事件を題材に、非情な現実に抗う人間の姿を描く渾身の書。

著者等紹介

ハジン[ハジン]
1956年、中国遼寧省生まれ。人民解放軍に6年間在役。1985年に渡米、ブランダイス大学で英米文学の博士号を取得。ボストン大学でも創作を学ぶ。英語で書くようになって10年あまりで書いた『待ち暮らし』で1999年の全米図書賞、2000年のPEN/フォークナー賞に輝くという快挙を遂げ、同書は世界的ベストセラーとなった。短篇小説集では、Under the Red Flag(1997)でフラナリー・オコナー賞、Ocean of Words(1998)でPEN/ヘミングウェイ賞、The Bridegroom(2000)でアジア・アメリカ文学賞を受賞している。現在はボストン大学で英文学の教鞭を執るかたわら、旺盛に執筆活動をつづけている

立石光子[タテイシミツコ]
大阪外国語大学英語科卒、英米文学翻訳家
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

キムチ

60
途轍もない面白さ!移民文学というカテ文学だろうが、渡米20年たたずしてこれほどの内容を英語で書く筆者の凄さに舌を巻く。「すばらしい墜落」では中国と米の文化摩擦が描かれていたが、当作では終始、中国知識人のリアルがわんさと綴られる。表題の「狂気」楊教授の錯乱、妄言の類が描かれるが、何かしら、面白い。その言動を通じて見える「中国の知識層が受けた」深い傷の実態。未来を担うはずの人々が幻滅と共に路頭に迷う状況である。合間に出てくる食べ物、ダンテの神曲、杜甫の詩など教養的香りが混在した面白みは頁を進ませる。2025/01/08

スイ

21
面白かった! 惹きつけられて一気読みだった(訳も良かった)。 文化大革命で精神的に深い傷を負った老教授、あの日の天安門へ向かう学生。 中国の歴史の中、描かれる人間たちは皆身勝手で、愚かで、でも非常に魅力的だった。 作者の他の作品も読みたい。2021/05/28

umeko

16
病床での教授のうわ言に翻弄される主人公は、傍から見れば奇妙な光景。正気では語ってくれなかったであろう教授の言葉は、正気じゃないだけに真に迫るものがあるってところもなんだか奇妙。しかし、生きることの喜びや苦しみを味わった教授の言葉は、たとえ狂気の中にあっても一人の青年にとっては真実の言葉になったのだなと感じた。面白かった。2013/01/16

ののまる

12
文革、天安門事件を知っていると、読み応えが200%上がる!2020/06/27

星落秋風五丈原

8
僕」の一人称視点で描かれる本書のテーマはずばり、「何がまっとうで、何が狂っているのか。」虚言から真実が明らかになってゆく皮肉な展開を生み出し、両者の狭間に立つ萬堅が、「本当に拠り所とするべきなのはどこか?」を求めて、二つの視点を揺れ動く。先生Vs近親者というミクロな対立が、両者に関係する萬堅を通じて、学生=国民Vs軍隊=国家というマクロな対立へ。「狂っているのは先生か僕か」という問題が、「狂っているのは国家か国民か」という、あの天安門事件を見て、世界が抱いた普遍的な疑問へも繋がる。 2005/05/26

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