内容説明
深夜の市を徘徊する不眠症の作家チャーリー・バクスターは犬を散歩中に友人ブラッドリーに出会う。離婚し落ちこんでいたブラッドリーに、周囲の人々の恋愛体験を基に小説を書くよう勧められたチャーリーは、よそに女をつくって家を出たブラッドリーの最初の妻、勝ち気な美人弁護士の次の妻、元ジャンキーに一目惚れした愛らしい娘、不良息子との折り合いに悩む哲学教授らに、それぞれの最もプライヴェートで、でも話さずにいられない愛の問題を語ってもらい、『愛の饗宴』という珠玉の物語にまとめてゆく―ありとあらゆる愛の形を織りこんだ、おかしくて哀しい究極の恋愛群像劇。全米図書賞最終候補作。
著者等紹介
バクスター,チャールズ[バクスター,チャールズ][Baxter,Charles]
1947年、ミネソタ州ミネアポリス生まれ。『ベスト・アメリカン・ショートストーリーズ』に5度選ばれた短篇の名主として知られ、レイモンド・カーヴァーら作家仲間の間で絶賛されてきた。一見、平凡な生活にひそむささやかな不安や恐怖を、静かなタッチの物語の上に表出させる手法が有名。ベストセラーとなった2000年発表の『愛の饗宴』は、全米図書賞最終候補作に選ばれ、幅広い読者を獲得できる長篇作家としてのバクスターの地歩を固めることになった。現在は長年活動の拠点としてきたミシガン州アナーバーを離れ、生まれ故郷のミネソタで創作を教えている
田口俊樹[タグチトシキ]
1950年生、早稲田大学文学部卒、英米文学翻訳家
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感想・レビュー
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kawauso
3
読み直し。愛の始まりと終わり、完璧に見える愛、乱暴な愛、チグハグな愛……いろんな愛がぎっしり詰まっていている。愛の見本市みたいな本。一人一人の人物の感情の解像度が高くて、今もミシガン州のアナーバーで生きているような気がする。彼にとって完璧に見えた愛でも、彼女にとっては不完全で、そうしたままならなさにおかしみを感じたり、寂しさを感じたり。たとえ過去になっても、そこに愛があったという記憶と手触りはとても素敵だなと思う物語だった。もっとこの人の本を読みたいけど、原書じゃないと難しいのかな。2023/07/20
ベック
1
いつものごとく、普通の人々の、普通の愛の営みを描いている。だが、そこはバクスター、そのなんでもない普通の世界が小説として成り立っているのだからたいしたものだ。いくら普通だといっても、それは言葉の綾であって、そこにはサスペンスもあればミステリもある。ときにはおかしく、ときには哀しく、ぎこちなくもあまりにも身近な真実の姿があるのだ。小説巧者バクスターの技量に奢らない、肩の力を抜いた自然な物語が楽しめる。限りなく普段通りの世界なのに、どうしてこんなに惹きつけられるんだろう?やっぱりバクスターはいい。もっともっと2006/05/13