内容説明
父の迎えを待ちながらピンボール・マシンで遊んだデパート屋上の夕暮れ、火星に雨を降らせようとした田宮さんに恋していたころ、そして、どことも知れぬ異星で電気熊に乗りこんで戦った日々…そんな〈おれ〉の想い出には何かが足りなくて、何かが多すぎる。いったい〈おれ〉はどこから来て、そもそも今どこにいるのだろう?―日本SF大賞受賞の著者が描く、どこかなつかしくて、せつなく、そしてむなしい物語たちの曖昧な記憶。
著者等紹介
北野勇作[キタノユウサク]
1962年兵庫県生まれ。1992年、『昔、火星のあった場所』が第4回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞してデビュー。その後、SFマガジン誌を中心に数多くの短篇作品を発表する。2001年発表の長篇『かめくん』が第22回日本SF大賞および「ベストSF2001」国内篇第1位を獲得。理系的なアイデアを叙情性に満ちた日常描写でつつんだ独特の作風が人気を集めている
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ハイランド
60
デビュー作以前に構想された本作、作者の本質が色濃く表現されている。異星人の侵略の方法は暴力的攻撃ではなく、同化・浸食・融合・置換なのではないか。自分は人間だったはずなのに、いつの間にか人間なのか異星人なのかアメフラシなのか分からなくなっていく。記憶は重なり失われ新たな記憶が加わっていく。脳みそは逃げ出し、電気熊は酒盛りし、社長は肉体を失ってしまう。SFとペーソスとメランコリー。ストーリーはぐるぐるとかき回され、生死すら境界があいまいになり、結末はあたま山の池の底に沈んでいく。この訳の分からなさ、大好きだ。2016/11/20
TSUBASA
30
何度か再読している本。記憶が入れ替わったり、脳や神経細胞を埋め込んだアメフラシが肉体と分離して語られるので、何度読んでも物語の全容がつかめないのだけど、得もいわれぬ寂しさが感じられるのが好き。きっと全容はわからなくてもいい、まるでどーなつの穴のように正解は存在しない小説なのかなという気がしてきた。ピンボールで遊んで止められなくなる場面が恐ろしくて好き。ぱーぱぱあ、ぱぱーぱあ。2020/01/19
おすし
21
なにこれ怖ぁぁぁ!北野勇作さん初読ですが、凄い作家さんがいたもんだ。結論をいうと、なんの話か全くわかりません(爆) 因果律がおかしい。どこから始まっている?未来から?いやいや、始まってもいないのか、どーなつは穴とワッカのどっちが本体なのか。会社に遅刻する夢見て、ああ夢だった、と思ったのも夢で、それもさらに夢で…。みたいな後味の作品(違うか、汗。夢落ちではありません) 落語の『頭山』をSF化するとこうなるの??(混乱)2021/03/29
ちょん
21
SF苦手な私ですが北野さんのSFだけは大好き。SF読んでるのに何故か懐かしい雰囲気に飲み込まれる。この懐かしさがたまらない。いつものヒトデナシたちは出てこなかったけど人工知熊…やられた(笑)2021/02/21
こよみ
8
面白かったんだけど解説が欲しいかも2017/03/19
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