内容説明
英文学者としてまた鉄道ファンとして著名な“鉄道先生”が、戦前の日本文学の名作8篇の中から“鉄道の謎”を発見しエルキュール・ポアロばりに推理する。現在は廃線になったり、駅名・路線名が変更された“幻の鉄道”も数多くあり、それらの迷宮に踏み込みながら、先生は鉄道ファンならではの蘊蓄を傾け、推理を展開する。“8つの謎”を通して、戦前の作家が鉄道に寄せた関心と、さまざまな鉄道の数奇な運命が描かれる。当時の鉄道の写真・絵・地図も豊富に入って、日本文学と鉄道に関心のある読者には魅力いっぱいの書下しエッセー集。
目次
「坊っちゃん」はなぜ市電の技術者になったか―夏目漱石「坊っちゃん」
電車は東京市の交通をどのように一変させたか―田山花袋「少女病」
荷風は市電がお嫌いか―永井荷風「日和下駄」
どうして玉ノ井駅が二つもあったのか―永井荷風「〓東綺譚」
田園を憂鬱にした汽車の音は何か―佐藤春夫「田園の憂鬱」
蜜柑はなぜ二等車の窓から投げられたか―芥川龍之介「蜜柑」
銀河鉄道は軽便鉄道であったのか―宮沢賢治「銀河鉄道の夜」
なぜ特急列車が国府津に停ったのか―山本有三「波」
著者等紹介
小池滋[コイケシゲル]
1931年東京生まれ。東京大学卒。都立大学・東京女子大学教授を歴任した。19世紀イギリス文学の権威であるとともに鉄道ファンとしても有名
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感想・レビュー
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しゅー
3
★★偶然だが、鉄分たっぷりの『月館の殺人』に続けて鉄道に関する本を読む。文学の中の鉄道について考察(妄想)する本。文庫で買いたいところだったけど、大手書店でも系列に在庫なかったので図書館本にした。表題作と「蜜柑はなぜ二等車の窓から投げられたか」、「銀河鉄道は軽便鉄道であったのか」あたりが面白い。鉄道好きだったら、もっと楽しめたかな。また、元ネタになっている小説で興味深いのが、田山花袋の『少女病』。昔、塾の国語の講師が『蒲団』を変態だと話していたけどそれ以上かも。どちらも未読なので、あくまでもイメージです。2022/04/16