内容説明
この子はまるで幽霊みたいだ―私立のクリニックを辞め、ふたたび教育の現場、小学校の情緒障害児クラスの教師となったトリイにとって、八歳の少女ジェイディはいままで出会ったどの子より不可解だった。周りが何をやっても、ジェイディは顔色ひとつ変えず、だれとも一言も話さない。まったくの無反応なのだ。何よりもトリイを驚かせたのは、その病的な姿勢だった。体をほとんど二つに折りまげ、上目づかいにこちらを見上げる姿は異様なほどだった。だが、ある日トリイは偶然の機会に、まっすぐに立つジェイディの姿を目撃する。あの異様な姿勢は、口に出せない問題をかかえる少女の、助けを求める悲痛な叫びなのか?つぎつぎと予期せぬ反応を見せはじめたジェイディが、少しずつ心を開いて語りだしたのは、陰惨な性的虐待をくりかえす忌わしいカルト集団の存在だった!相談する相手もない孤独と不安のなかで、自信を失ったトリイは真実をつきとめ、ジェイディを救うことができるのだろうか?情緒障害児との心の交流を綴り、読者の圧倒的な支持を得てきた著者の、新たな衝撃と戦慄に満ちたノンフィクション。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん
25
酷い虐待の事実に気持ちが悪くなった。そこを探り出すまでの難しさに本当にプロの技術と経験が必要なのだなあ。虐待をされたと認めるまでの親の呪縛を思うと、こういう親はどこかに閉じ込めて一生出られないようにできないものかな、と思った。自分より弱い子どもや動物を虐待して喜ぶ人は更生するのだろうか。2021/06/06
ネロ
20
A-/ノンフィクション。八歳のジェイディは、体を二つ折りにし、決して喋らない(選択性無言症)少女。他人を見るときは不自然に首をかしげ、前髪の隙間から上目づかいで覗き込む。クラスメイトからは“いないもの”として扱われ、彼女もまた彼らを“いないもの”として過ごしていた。そこに著者であり特別支援学級を担当するトリイが赴任。彼女は豊富な経験から、わずか6時間でジェイディの口を開かせることに成功する。徐々に心を開き始めたジェイディが語り出したのは、警察官でさえ吐気を催すほどの、凄惨で残虐なもの。それは悪魔崇拝、、、2025/07/22
caramel
17
タイトルから、てっきり影の薄い子って意味だと思っていたら、全然違いました。トリイの作品を読むのは3冊目ですが、一番印象に残った作品。内容はホラーやミステリー好きの人でも興味深そうな、ちょっとノンフィクションとは思えないくらいの壮絶な話でした。でも今回もトリイの子供への接し方やものの考え方が本当に素敵で、きっと当時はまだお若いのになんて凄い女性だろうと尊敬してやまない。そしてジェイディの話す事が事実であろうとなかろうと、今後こういう事を防ぐ為にもこの話を公開する事にしてくれた事は意味のある事だった思う。2022/08/20
4/123
12
再読。この作品は【ノンフィクションである】という一文で、私は自分がどこの立ち位置でどういった目線でどう読むのか、という事を物凄く気にする人間なのですが、そういった物を取り払い、不謹慎かも知れないが本音を言うのであれば、読み物として非常に面白い作品だな、と。ただ勿論この世界で目に見えはしないが、実際に血が流れ肉が削がれているというおぞましさや脈打つような悪意が存在している事は、きっと間違いなく、まるで覚めない悪夢を見続けているような読後になる。【はたしてそれらは本当にあったことなのか?】ゴーストに捧ぐ。2017/02/20
ペルー
11
実際は2000年に読みました。昔の読書記録が出てきたので、追加。これは虐待の内容が最後までよくわからず、その点の読後感はすっきりしない。