内容説明
ロサンゼルスに暮らす13歳の少女ジョーイはたいへんな音楽好き。毎日、学校帰りにパパス楽器店に立ち寄り、ギリシア人のパパスさんと音楽についておしゃべりの花を咲かせている。そんなある日、食事に出かけるパパスさんにジョーイは店番を頼まれた。そこへひとりの見慣れぬ少年が訪れ、角笛を売りたいと言う。30センチくらいの長さの、巻き貝のようにねじられた銀青色の角笛からはこの世のものとは思えない妙なる調べが流れ出た。じつはこの少年は、人間に姿を変えたユニコーンだったのだ。やがて角笛の音に導かれ、ジョーイはユニコーンの住む幻想郷「シェイラ」へと赴いた。『最後のユニコーン』の著者ビーグルが、ふたたび世界中のファンタジイ・ファンに感動を与える。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ワッピー
23
現代の吟遊詩人ピーター・S・ビーグルの96年発表の作品。ロスアンゼルスの少女ジョーイは、ある日不思議な音楽を聞き、異界<シェイラ>に入り「大老」と呼ばれる視力を失いかけているユニコーンたち、サタイヤ、小ドラゴンなど不思議な生き物に出会う。ジョーイは何度もロスとシェイラを行き来するうちに、ロスにも人間に姿を変えたユニコーンがいることを知る。何の選択もできない神話的存在であるよりも、愚かで、無知で、みじめな人間になりたいユニコーンの願いとは?これまでとはやや違うテイストに感じたので、処女作に戻ってみます。2019/05/17
新地学@児童書病発動中
11
ユニコーンの世界と人間の世界を行き来することができる少女の物語。ちょっと不気味で異質で、それでも美しく神秘的なユニコーンの世界の描写が素晴らしい。物語の最後で、少女のおばあさんが、盲目になってしまったありとあらゆる色の、無数のユニコーンを癒す場面は忘れがたい印象を残す。2011/12/11
mizuha
8
美しい音楽を奏でる角笛を売りに来た少年インディゴと、その音楽に誘われるように「境」を超えシェイラにたどり着くジョーイ。どうにも馬が合わないのは、お互いの望みや憧れが正反対に見えるせいだろうが、結局は同じ事なのだと思う。でもラストは、2人が長く助け合って行くのだろうと思わせてくれて一安心。そしてここにもまた、愛情溢れる素敵なおばあちゃんが居る。色々なメッセージが込められているのだろうが、美しいシェイラの情景と生き生きとした住人たち、何よりも「最後のユニコーン」とは違ったユニコーンの姿が印象的。2014/04/13
おだまん
5
旅立ちのスーズの後書きを読んでこちらも。児童書扱いなのかしら?少しテイストが違うけれど根は同じ。あぁ、ユニコーン・ソナタ、聴いてみたい。スピルバーグのアニメ化、してない?2024/02/11
ふたば
2
『最後のユニコーン』ほどはっきりしたメタファンタジーじゃないというか、一見とっても真っ直ぐな、まっとうなファンタジーだけど、ファンタジーの構造に意識的になってしまった人間にはとってもメタというかうわあああーとなるお話だった。向こう側へ行きたいという人間の憧れよ……。ユニコーンというものは(これはドラゴンでも代替可能かもしれない)夢そのものなんだなあ、と思った。2015/09/22