内容説明
西暦2109年、火星のアマチュア天文家が太陽に接近しつつある未知の小惑星を発見した。惑星間天文学連合による追加観測の結果、おそるべき事実が判明する。この天体は約240日後に地球と衝突するというのだ。そうなれば爆発の被害はもとより、粉塵による太陽光の遮断と硝酸雨のために、地球は今後数十年間、居住不可能な死の星と化してしまう。小惑星は死と破壊の女神にちなんでカーリーと名づけられた。この危機に際して地球は、最新鋭のマスドライバーを搭載した宇宙船「ゴライアス」に特殊任務を命じ、カーリーへ派遣する。カーリーにマスドライバーを設置してその駆動力で軌道を変え、地球衝突を回避しようというのだ。だが、その計画がいよいよ実行に移されたとき、次々に思いもかけぬ障害が…。宇宙から飛来する鉄槌の一撃をいかにして防ぐことができるのか。現実に起こりうる災厄を、該博な科学知識と迫真のストーリーテリングを駆使して描きあげる、ファン待望のクラーク最新長篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Aya Murakami
62
図書館本。 一言で内容表現するとエピソードカーリー(orasで巨大隕石を破壊する話が元ネタ)ですね。本作の93年くらいに発表らしいのですが、oras発表の2014年になっても古さを感じさせないテーマのなのですね。 2001年のHALが恐怖の感情を口にしながらデイジーベルという愛の歌を歌ったのに対して、本作のデイビットというAIはひたすらロジックに生きる愛も恐怖も縁のない生活をしているようです。しかし危機が迫ると仲間を見捨てて逃げるという生存本能は持っているようです。カワイイ。 2018/08/28
流離の来た狐
3
本作以前に作者が著した同類の小説『宇宙のランデヴー』に登場するスペースガード計画は天体が地球に衝突する危機感から発足した実在の組織『スペースガード財団』の名前となっている。SF小説の中に描かれた危機感や問題解決に対する基本的な考え方が現実世界にも引き継がれているという事実にまず驚かされる。SFとは言っても宇宙(太陽系)についての既知の事実がベースになっているので、読む側もウィキペディア等で少し武装しておくと2倍?堪能できるかと思います。 2024/03/22
劇団SF喫茶 週末営業
2
クラークSF中編。隕石衝突、謎の宗教団体、VR世界など面白い要素満載だがあっさり終わる。人物の感情を排した記述が神話的な叙事詩を思わせ、宇宙叙事詩の趣き。作中の隕石や宇宙船に神話や旧約聖書に由来する名前がつけられ、宇宙の出来事を神話世界に接続して語っているように読める。なお宇宙船ゴライアス号に乗るデイビッドという組み合わせがいかにも意味がありそうだが(旧約聖書ではダビデがゴリアテを退治する)、特に意味もなく終わった。自爆するしかない展開で「カミカゼ」呼ばわりはさすが戦勝国の傲慢な白人様だなと思ってしまう。2025/05/09
月夜乃 海花
1
アーサー・C・クラークはSFの代表作家として有名なので、読んでみた。何よりも驚きなのは本格的な宇宙や技術的な知識が豊富に描かれているのに、この本が発売されたのは1995年つまり私が生まれるよりも前に書かれたものであるということだ。今回のストーリーはある未知の小惑星カーリーが地球衝突しそうになるのを登場人物が阻止しようとするという話である。20年以上前にこのような作品を書いた著者に敬意を示したい。2017/11/15
いときち
1
遅きに失するが、これは本人ソロの遺作になるのだろうか。なんにしろ、様々な「鉄槌」にユーモアを感じてしまった。何より科学考証に基づいたクラークらしく、◎。オールドファンにはたまりませんわ。ところで、映画ディープインパクトって、クラーク原作のクレジットあるのかな?追)という構想があっただけ。のようだな。2013/05/16