内容説明
イタリアの古都を訪れた英国人カップル、コリンとメアリは、道に迷った夜ロベルトという地元の男と知り合った。ロベルトの家に招かれ、体が不自由な妻キャロラインに紹介された二人は、自分たちが奇妙な罠にはまったことを知る。幻想と現実がとけあう街で異常な愛の迷宮に囚われた男と女。『イノセント』の鬼才がエレガントに描く文学ポルノグラフィー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
63
マキューアンの初期の作品。若い男女のカップルが観光で訪れたヴェネツィア(と思われる観光地)で、不可思議な夫婦と出会ったことによって事件に巻きこまれていくダークな世界。狭い通りや路地を歩く男女がまるで迷路に入り込み、死の国を彷徨っているかのような幻想的な場面がいくつか登場する。異国で異邦人を簡単に信じちゃ駄目だという教訓なのか、グロテスクな結末が待っている。『迷宮のヴェニス』のタイトルで1990年にポール・シュレーダー監督によって映画化されているが、まだ観たことはない。2017/07/17
練りようかん
13
運河と美味しい料理の都へ観光旅行に来た男女。付き合いは長そうだが気安さはなく、何があったのかが気になった。レストランを探しているところで現地の男に話しかけられるのだが、だいぶ強引で男の妻を含めたこちらの2人が怖くなってくる展開。訳者あとがきではトーマス・マン『ヴェニスに死す』の影響が書かれていたが、宮沢賢治『注文の多い料理店』を想起したのが面白い。暴力を振るう男とそれを望む女。家父長制を正当化し維持するため刷り込まれた副作用、性差の犠牲が男で深い。水面の泡にうつる虹が消えていく描写は儚く、印象強く残った。2025/06/24
刳森伸一
4
ベネチアを彷彿させる街で休暇中のカップルが奇妙な夫婦に出会って…という感じのサスペンスタッチの小説で、少しエロチック。カップル間の関係や夫婦間の関係が独特で、それらの関係を通して男女間のあり方などが問われている。しかし、その問いと物語(のオチ)との関連性が読みとれず、(小説自体は面白いとは思うのだが)腑に落ちない。2017/10/12
やまはるか
2
マキューアンの初期の作品で、猟奇的な展開を意外に思ったが、クレストブックスなどで親しんでいる緻密で執拗な物語構成の中に共通するものが潜んでいると感じた。2018/11/13
もつ
2
居心地のいい納まりの悪さっていうか。2015/03/11