内容説明
絵画、小説、映画…と、幅広く活躍するマルチ・アーティストが日常のなかのシュールな風景を描く、ブラックな味わいの十三篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
61
映画『柔らかい殻』の監督が作家でもあると知って検索したらこの本が見つかったので借りました。ゲイ・テイスト短編集という肩書きですが、「陥りたくない」と思っていても陥ってしまう孤独や人生から疎外されているという辛さ、上手くもやれずに自分や大切な人を損ねる事でしか生きられない事実、図らずとも犯す罪、それによって大人になる断片が透き通るような文体で瑞々しくも残酷に描かれている。そこに既視感と失ってしまった情感の視点への悼みと恥を感じてしまう。私は「ヒヤシンスが恐い」、「七センチの靴」、「野蛮なる連続性」が好みです2018/06/04
訃報
6
ゲイ・テイストと紹介されているが、元をたどればその感性は少年のものだ。カポーティにしてもそうだが、ゲイの中には、自分の少年期と上手く折り合いをつけられず、大人になっても少年を抱え続けている人が少なからずいるのだろう。表題作と『ヴェルディに抱かれて』はいずれもキレのあるオチだが、話をそこでまとめてしまうというより、さらに深い奈落へ突き落として彷徨わせる感じが好きだ。お気に入りは『信念の塔』。三つの時間軸で切れ切れに構成されており、重いテーマをいくつも孕んでいるがそれに引きずられることはなく、タイトルの意味も2014/01/23
すけきよ
2
人生における残酷さ、狡さ、理不尽さ、皮肉が描かれた短篇集。ゲイをテーマにした作品も多い。「まとも」な側にいるはずのダメ人間と、「異常」なはずの真人間。大義名分の元に行われるマッチョな残酷さと、偏見の目に曝されながらも平穏を求めるマイノリティとの皮肉な対比。お気に入りは、「恍惚のフラミンゴ」「ヴェルディに抱かれて」「針」「七センチの靴」「がらがら蛇」「がらがら蛇」2009/03/12