出版社内容情報
ガラス職人のイヴが首を切り裂かれた父の遺体を発見した。凶器はイヴが作った花瓶でマシュー警部は慎重に聞き込みを進めるが……
内容説明
吹きガラス職人のイヴが自宅で父ナイジェルの遺体を発見した。捜査を指揮するマシュー・ヴェンは患者救済組織の所長であるナイジェルが、青年マックが自殺した事件を調査していたことを知る。マックは精神科病棟から退院させられた後、自殺を教唆するサイトにアクセスしていた。マシューは病院とサイトの両方を追うが、イヴは父の死が自分のせいではないかと心を痛めていて…。人間心理の闇に分け入るシリーズ第2作。
著者等紹介
クリーヴス,アン[クリーヴス,アン] [Cleeves,Ann]
1954年、イギリス西部ヘレフォードシャーに生まれ、その後ノース・デヴォンへ移り住む。1986年にA Bird in the Handで作家デビュー。2006年に〈ジミー・ペレス警部〉シリーズの第一作『大鴉の啼く冬』で英国推理作家協会賞最優秀長篇賞を受賞。2017年に英国推理作家協会賞ダイヤモンド・ダガー賞(巨匠賞)を受賞。2020年には『哀惜』でアガサ賞最優秀長篇賞を受賞する。英国ミステリ界の巨匠として、国内外から高い評価を受けている
高山真由美[タカヤママユミ]
青山学院大学文学部卒、日本大学大学院文学研究科修士課程修了、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
516
好き嫌い分かれそうな作品。著者の持ち味は存分に発揮されており、結果としては犯人の抱える闇の演出もなかなかのもの。しかし、地道な捜査をひたすら描写しておきながら、物証なしの仮説(しかも思いついたのはマシューではない)から一気に解決にいたる流れや、殺人と連続自殺が物語の中で上手くリンクしておらず、魅力的な題材を活かしきれなかったこと、とりわけフランクの死は完全に蛇足でしかない点などが、ちょっと甘すぎる気もする。マシューの同性愛婚も、本当の意味で掘り下げきれていないからか、感情移入の妨げになってしまっている。2025/06/07
ナミのママ
81
シリーズ2作目。自分の仕事場で父親の死体を見つけてしまう、とても殺伐とした事件の始まり。今作も風景描写に加え、登場人物一人ひとりの何気ない生活が丁寧に描かれている。マシュー以下チームメンバーの個性がよくわかり人物像が浮かんでくる。スピード感ある作品が増えた感がある現代に、一針ずつ布目を追うような緻密な文章に深呼吸をして向かい合った。堅物マシューが少しずつ変わっていくのも楽しみの一つ。事件は思いがけない犯人でサイコパスか、不気味さを感じる。それにしても被害者はこれから立ち直れるのか、それが心配。2025/05/10
M H
28
楽しみにしていたマシュー・ヴェン第2弾。事件そのものよりも、視点を変えながら積み重なっていく小さな変化と人間模様をじっくり味わえるのが素晴らしい。今作も展開はゆっくりで、シリーズ的な進展もほんの少し。でもそれは欠点ではなくて、熟成する味なのだ。マシューを、ジョナサンを、ルーシーをずっと見ていきたい。描写がとても地に足ついている分、犯人像が異様で唐突に披瀝されるのが若干浮いているような気もするが仕方ないか。大満足。2025/06/01
わたなべよしお
22
今後も読み続けるシリーズだとは思うが、今回はちょっと、カッタルイ感じだったかなあ。事件解決に至る道筋がイマイチだった。さらに、このシリーズの登場人物たちは皆、もう一つ感情移入がし難いというか。ジミー・ペレスシリーズの方が僕にはしっくりくる感があった。2025/06/07
星落秋風五丈原
22
男性の恋人がいる、やり手のマシュー・ヴェン警部シリーズ第二弾。今度も彼の夫ジョナサンがかかわるコミュニティで事件が起こる。ジョナサンが複合施設を運営しており、そこには様々な人が出入りする。こう言っては何だが、容疑者、被害者、そして事件の宝庫である。ジョナサンは当事者として関係者に関わり、マシューはあくまで捜査する者として関わる。一方は善性説を信じ、一方は職業柄必ず誰かが何かを隠していると思わなければならない。衝突、摩擦も起こるが、お互いの愛情が最後は融和剤になる。2025/05/28