内容説明
それは完全犯罪のはずだった―妻の実家の財産を狙う張東昇は、登山に連れ出した義父母を事故に見せかけて殺すことに成功する。だがその光景を偶然朱朝陽たちのカメラがとらえていた。彼らはある事情から、自分たちの将来のために張東昇を脅迫して大金を得ようと画策するが…。殺人犯と子供たちの虚々実々の駆け引きの果てに待ち受ける、読む者の胸を抉る結末とは?中国で社会現象を巻き起こしたドラマ化原作小説。
著者等紹介
紫金陳[シキンチン]
中国の作家。1986年、淅江省寧波市生まれ。淅江大学治水工学科卒。大学在学中からインターネットで小説を発表する。2012年発表の『知能犯之罠』から始まる“官僚謀殺”シリーズで人気を博した
稲村文吾[イナムラブンゴ]
早稲田大学政治経済学部卒、中国語文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
339
面白かった。決して目新しいフォーマットではないのに、中国が舞台となりその風土の中で描かれるだけでかなり新鮮。子供たちの住む世界とそれ以外の大人たちの生活の色合いが異なり、そこが中国の社会派ミステリ独特の持ち味として機能している。なかなか重たいラストに持っていっているけれども、そこに至るまでの些細な描写たちがきちんと説得力を持たせてくれて、作風を軽くすることなく成立。シリーズの二作目ということで、刊行されている『検察官の遺言』も読んでみようという気になっている。2024/08/21
こーた
191
展開はつねに想像の斜め上をいく。もっと別の、まっとうな道を選ぶ機会は何度もあった。それでも少年たちの選択は、その時どきでほかになかった。そうおもわせる切実さがある。さまざまな格差や、家父長制的な家族観、あるいは他者への偏見と云った(どの国も共通に抱える)社会の諸問題も背景に覗く。立場の逆転、また逆転。それらがさいご、ぜんぶひっくり返る!本の外側にいる僕らもふくめて、くるっと反転させられる。これぞ文芸。物語とは何か、と云ったことまで考えたくなって唸る。黒くて苦い夏休み。スゴいものを読んだ!⇒2023/06/14
榊原 香織
128
上下巻の下 チャイナ・ハードボイルドというか、シノワ・ノワールというか 東野圭吾の影響。中国風味になるとこうなるのか。大学教授が推理するシリーズなのだそうだけど、今回はちょっとしか出てこないし、事件のインパクト強すぎて。 面白かったけど、中国大丈夫か2024/10/18
モルク
91
下巻に入って更に面白さが増し一気読み。学年一の秀才中2の主人公朱朝陽と施設から逃げてきた丁浩と普普が偶然殺人現場を撮影したことで犯人張東昇をゆする。更に彼の妻の殺人も暴きある計画に張を引きずりこむが…駆け引きが繰り返される。そして最後には朝陽の緻密な計画が…身体も小さく腕っぷしも全くダメ、ひ弱な少年が殺人犯、更には警察を騙せるのか。いやー、面白かった。著者の別の作品も読んでみよう。2025/03/18
fwhd8325
80
とても面白かった。東野圭吾さんの「白夜行」を思い出させるのだけど、私の思考の中では、さらに上を行っています。ここ最近、このようなジャンルは敬遠していたのですが、やはり面白いです。上巻の冒頭からイメージしていたものとは大きく予想を超えていきました。ちょっと興奮の一冊でした。2024/11/05