内容説明
下院議員の元に第2の脅迫状が届き、ポーはロンドンに戻って捜査を担当するよう命じられる。生放送中に倒れた男性の死因は毒によるもので、投与された経緯が不明だったため、下院議員は24時間監視態勢で警護されていたが…。一方、ドイルの父親が殺害された時刻には雪が降っていて、現場にはドイルの足跡だけが残されていた。ドイルの殺人事件と毒殺犯の両方を追うポーの前に、密室の謎が立ちふさがる。
著者等紹介
クレイヴン,M.W.[クレイヴン,M.W.] [Craven,M.W.]
イギリス・カンブリア州出身の作家。軍隊、保護観察官の職を経て2015年に作家デビュー。2018年に発表した『ストーンサークルの殺人』で、英国推理作家協会賞最優秀長篇賞ゴールド・ダガーを受賞した
東野さやか[ヒガシノサヤカ]
上智大学卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
445
エンターテイメント性はたしかに過去一かもしれない。場面転換や物語の展開が多く、ポーのパーソナルな部分にも小ネタを添えてファンサービスもバッチリ。ティリーの捜査への貢献度がこれまでよりやや低く感じらるかわりに、コメディーリリーフとしてよいアシストをしており、こういう使い方もできるかと目から鱗。犯人の登場のさせ方が、ミステリのセオリーから若干外れており、犯人当てを楽しむことはどんどんむずかしくなってきてはいるけれども、仲間と一緒になって捜査している感は強くあるので、この路線でいいのかも。2024/09/03
パトラッシュ
271
(承前)連続密室殺人と父殺し容疑をかけられたドイルの事件が、思いがけぬ手がかりから収斂していく。先の先まで考え抜いたボタニストの犯罪計画と、解明へ奮闘するポーたち捜査チームとの壮絶な頭脳戦が展開される。やがて西表島の話を含む全ての伏線が回収されていき、思わず「そう来るか」とうならせるラストはいつもながら見事だ。これほど鮮やかに着地を決める手腕に並ぶのはディーヴァーくらいか。ただ、あれほど金と時間を費やした不可能犯罪を実行しながら、あまりに犯行動機がつまらない。大犯罪者を動かすほどの強烈な動機が欲しかった。2024/09/29
青乃108号
255
なるほど。2つの不可能犯罪は見事に結び付いた。それは兎も角、ストーリーのうねる様な展開は圧巻でツイストに次ぐツイスト、最後の1ページまで徹底したサービス振りったら凄いとしか言い様がない。前作もかなり良かったのだが、今作はそのハードルを軽く超えて来た。そして何と言っても、ワシントン・ポーに訪れる一大事!これは1作目からの読者にしか味わえない、一種の多幸感を与えてくれるものだ。それ故にシリーズがもう終わってしまうのではないか、との嫌な予感に解説も読んでしまった。6作目もあるそうな。どんだけ楽しませてくれるの!2025/02/11
タツ フカガワ
185
衆人環視のなか、なぜ3件の毒殺は可能だったのか。なぜ新雪の上に足跡を残さずドイル邸に侵入し、エステルの父を殺害して逃走できたのか。ボタニストの連続毒殺事件がエステルの事件と結びついたところから、パズルのピースがどんどん嵌まっていく。ポーをはじめブラッドショー、エステル、フリンら個性的なキャラクターに魅了され、この怒濤の展開(それも最後の1行まで)に酔い痴れました。シリーズ最高傑作かも。2024/09/14
道楽モン
178
章立てを意図的に短くして、リーダビリティを高めている。これによりグイグイと読まされる感が凄い。章の接続性も計算されており、どうなるんだというワクワク感を100回以上も浴びれば、これはスペシャルな読書体験となりますよ。こうした技工的な進歩を1作ごとに重ね、ミステリとして極上のエンタメ作品に仕上がっている。本作で重要な役割を演じる検視官の実家が豪邸という、英国の階級社会を象徴的に取り上げている。人間関係にも影響をもたらす位にデリケートなものらしく、頑なに秘密にしようとするのね。愛犬エドガーは今回も可愛い。2024/09/02