出版社内容情報
村にやってきた美しい美術教師。悲劇はここから始まった。老弁護士の回想で語られる事件の真相とは? 傑作ミステリがついに復刊
内容説明
あの夏の午後に、チャタム村へとやってきた緋色のブラウスの女性教師―ミス・チャニング。彼女の来訪は、静かな池の水面へ投じられた石のように平穏な村に波紋を起こした。美しい女性教師が同僚を愛したことで起こった“チャタム校事件”。老弁護士が回想する思い出と、公判記録の中で語られるこの事件が引き起こした悲劇とは。精緻な文章で人の心の闇を描くアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。
著者等紹介
クック,トマス・H.[クック,トマスH.] [Cook,Thomas H.]
1947年、アラバマ州に生まれる。“称賛されるサスペンス作家”としてアメリカで多くの読者を獲得する。本書『緋色の記憶』で、本国で最も権威のあるミステリ賞、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞を受賞。同書は日本でもミステリ小説の各種ランキングに選出された。その他にも、マルティン・ベック賞受賞作『緋色の迷宮』等、数々の作品を精力的に発表している
鴻巣友季子[コウノスユキコ]
英米文学翻訳家・文芸評論家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
112
古風な風情が漂う1920年代のニューイングランド地方の村を舞台としたミステリ。これは結構な余韻を残す作品だった。それまでゆっくりと積み上げられてきた朧げな不穏さが最後に氷解し、真相に加えてそれまでの意味を一気に知らしめられたと感じた。それはどこか想像はしていたにもかかわらず実際に叩きつけられると違うのだ。自由への憧憬は罪なのか。しかし代償は大きかった。ミス・チャニングは最初から最後まで本当の気持ちしか語っていなかったと思う。それを信じたのはただ一人の人物だけだったかもしれないが、それがどこか救いと思えた。2023/05/30
優希
49
純文学としてもミステリーとしても読める作品だと思いました。浪弁護士の回想と裁判を繰り返しながら物語は進みます。美しい女教師のミス・チャニングが同僚を愛したことで起きたチャタム事件。静かな中に痛みとして投げ込まれた世界に魅せられました。2023/05/29
mikky
15
傑作ミステリの復刊。美しい美術教師をめぐる悲劇の物語。ステレオタイプと言えばそれまでですが、いかにもいわくありげな物語の導入、村の象徴のように見える父、傍観者たる主人公の視点と、あちこちにミステリ好きが胸躍らせる仕掛けが張り巡らされています。 事件の過程、物語の結末としては、決して予測がつかないものではありません。それでも全体を覆う田舎の村の風景(美しくも、陰鬱にも見える)、そこに暮らす人々の感情が色彩を伴って眼前に迫るようで、物語の世界をたっぷり堪能させていただきました。2023/05/01
だるま
15
1998年に文春文庫で出た同タイトルの復刊本。その前年のエドガー賞受賞作で、日本版もランキング本では上位になったらしい。それなら面白いに違いないと思い読んでみたが、どうも私にはイマイチだった。老弁護士のヘンリーが主人公。彼が学生時代に起こった悲劇「チャタム校事件」を回想していくストーリーだが、現在と過去が細かなカットバックで描かれて読み難いし、事件の内容が終盤まで分からず焦れったくなってしまった。そして少年時代のヘンリー、立ち聞き多すぎf(^_^)。予想の上を行く真相には驚いたが、それまでが何しろ退屈で。2023/05/02
黒猫
13
長ーい妄想膨らみまくりの助走からラストの転落が衝撃的だった。想像を超えた後味。最後の最後まで続く追い打ちが辛い。自由と理想を追い求める年頃のヘンリーの気持ちが痛いほどよく分かる。少年ヘンリーの目を通して自分の若い頃を思い出して懐かしく思えた。あの烈しい感情、今は持てない。2023/09/03
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