内容説明
妻の誕生日祝いに用意したナイトクルーズは、女性の悲鳴と銃声で悪夢に転じた。暗い川面から若い女性を救いあげたジェイは、それ以上の関わりを怖れ、彼女を警察署の前に放置して立ち去ってしまう。かつては公民権活動家で、当局の弾圧をも経験した彼にとって公権力とは恐怖そのものでしかなかったのだ。だが射殺死体が発見され、ジェイは否応なく事件の渦中へ…アメリカ社会の影を新人らしからぬ筆力で描くデビュー作。
著者等紹介
ロック,アッティカ[ロック,アッティカ][Locke,Attica]
テキサス州ヒューストン生まれ。ノースウェスタン大学卒で、サンダンス・インスティテュートに学んだ。映画とテレビの世界でシナリオライターとして活動。小説デビュー作『黒き水のうねり』は、アメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)をはじめ多くの賞の候補となった。夫と娘とともにロスアンジェルスで暮らしている
高山真由美[タカヤママユミ]
1970年生まれ、青山学院大学文学部卒業、日本大学大学院文学研究科修士課程修了、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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シキモリ
26
舞台は1981年のテキサス、大衆運動を率いたことで逮捕歴のある弁護士がひょんなことから事件に巻き込まれていく社会派ミステリー。公民権運動に港湾ストライキ、更に石油備蓄問題が絡み合う多層的かつ複雑なプロットで、アメリカの暗部を描こうとする著者の熱量がひしひしと伝わる実直で骨太な作品だが、物語の焦点が定まらぬまま、風呂敷を広げ過ぎてしまった印象。それ故、終盤における主人公の決意表明も今ひとつ説得力に欠ける。デビュー作の気負いとも取れる過剰な緻密さも相まって、本編600頁超を読了した満足感よりも徒労感が勝った。2022/02/20
maja
17
読み応えがあった。公民権運動の芽は発芽はしているとはいえ未だ根深い人種差別がある1981年テキサス。弁護士ジェイの日常は、バイユーから白人女性を救った夜を境に変化していく。危機意識が身に染みている彼は我が身に降りかかる災いを察知して関わりを避ける。そのことは苦い体験から学んだ自身の保全のためでもあった。だが、この事件の裏に、湾岸労働組合のストに、ささやかな生活を身重の妻と用心深く送っていたはずの彼の生活は次第に巻き込まれて立ち向かわざるを得なくなっていく。2020/04/12
しゃお
13
1981年のテキサス州ヒューストンを舞台に、かつて公民権運動で活躍するものの、現在は地味に働く黒人弁護士が主人公。人種差別がまだまだ根強いなかで、かつての苦い過去から自分自身の内なる火を消していた主人公が、ある事件をきっかけに消したはずの内なる火が残っていた事に気づくようすは胸が熱くなるものがある。事件も物語の展開も派手ではないものの、著者の描く真摯に現実に向かい合う様子に最後まで飽くことなく読ませてくれた。2011/04/16
Satoshi
10
警察に父親を殺され、公民権運動による逮捕歴のある黒人弁護士が主人公。今は事無かれ主義になっているが、事件に巻き込まれていく。労働組合のストライキに関わる陰謀も背後にある。白人労働者の発言内容はトランプ支持者にも通ずることもある。派手さは無いが骨太なミステリー。2021/01/16
あつ子🐈⬛
8
何故かずっと男性作家と思い込みながら、読了。ぐいぐい引き込まれ最後まで夢中で読んだ。これがデビュー作とは。翻訳との相性も、とても良かったです(嬉)2017/08/30