内容説明
仕事に縛られない気楽な人生が最高さ―ディミトリにとって、親友のマーカスのように真面目に働くのは性分ではなかった。彼はマーカスを伴い、売人のもとに麻薬の買付に訪れるが、そこでその男が情婦に暴力をふるう現場を目撃し、彼女と現金を奪って逃げてしまう。二人は情婦をかくまうが、売人は殺人狂の男を彼らへの復讐に指し向けた!話題作『俺たちの日』に続く、誇り高き男たちの物語。英国推理作家協会賞候補作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
bapaksejahtera
14
70年代のワシントンDC。無軌道で薬物にまみれたギリシャ系等の白人黒人の若者が入り交じる下層社会を描くハードボイルド小説の由。「俺たちの日」から2世代下った時代が舞台で、記述の3分の1程に当時のロックと映画の蘊蓄が散らばって挟まる。歌詞がカタカナ縦書きで長々と挿入され、実に煩い。前作はそれなりにドラマ性があったと思うが、本作は脈絡のない残酷なアクションが頻発するだけの印象しか残らない。時代や音楽のジャンルにシンパシーのある読者でないと、とてもの事について行けぬ小説だった。以降この作者を追う事はないだろう。2025/06/24
Satoshi
4
俺たちの日のピート・カラスの忘れ形見ディミトリが主人公となったワシントンサーガの2作目。本作も単純な復讐ものではあるが、主人公のピートはダメ人間で麻薬の売買で糊口を稼いでいる。ディミトリが古物商に虐待されていた売春婦を匿ったことからやくざ者から襲撃され、彼らに復讐するという単純かつありきたりなストーリー。しかしながら、親友のマーカスがレコード屋であるので、70年代の音楽ネタが溢れており、その空気感が楽しい。おそらく、英語の原文で読むとよりその雰囲気が味わえるのであろう。2017/06/14
fritzng4
3
ドライブインシアターで無軌道な殺人を犯した小僧をリクルートするところから始まるザ・ハードボイルド小説。遠い記憶の彼方にある前作とはまた違った味わいで70年代の匂いが全編に横溢している。ジミ・ヘンドリクスをロックではなくソウルコーナーに並べるクセある店員のいるレコード店主クレイと、自分が麻薬を売った高校生たちの死に心を痛めるギリシャ人の売人カラス。取り立てて劇的な物語が動いているわけではないのに面白く読ませるのはキャラクターの描き方が上手いからだろう。音楽に関する固有名詞の乱れ打ち、音楽好きにはたまらない。2025/05/08
vertigo
3
「俺たちの日」が好きだったので。こっちの話はああいうサーガ感はなくてもっとチンピラいんだけど、やっぱりタフでセンチメンタルで詩情豊かなヴァイオレンス・ロマン。食べ物や当時の文化、何よりブラックエクスプロイテーションムービーの気分をがっちり伝えてくれるのが嬉しいし、皆がつながる場所が映画館になっているってのが(それが物騒な場所だとしても)好きだ。ああ、こういう場所にタランティーノとかいたんだろうなあって思う。2013/09/16
パカゲニー
1
何だか登場人物に不潔感が漂い好きになれない。チンピラやくざの本もいろいろ読んだが、この本ではそれぞれ人間の個性が薄っぺらに見えてしまうのは残念です。当時流行ったと思われる曲名が沢山でてくるが、なんだか、これでもかの感があり、すぐ次のシーンにすすんでしまってしっくりきません。訳本でよんでいるせいか、原文で読めばビートやドライヴ感が味わえるのでしょうか。2015/04/16