内容説明
誰が言いだしたのか、その土地は呪われた「ジプシーが丘」と呼ばれていた。だが、僕は魅了された。なんとしてでもここに住みたい。そしてその場所で、僕はひとりの女性と出会った。彼女と僕は恋に落ち、やがて…クリスティーが自らのベストにも選出した自身作。サスペンスとロマンスに満ちた傑作を最新訳で贈る。
著者等紹介
クリスティー,アガサ[クリスティー,アガサ][Christie,Agatha]
1890年、保養地として有名なイギリスのデヴォン州トーキーに生まれる。中産階級の家庭に育つが、のちに一家の経済状況は悪化していまい、やがてお金のかからない読書に熱中するようになる。特にコナン・ドイルのシャーロック・ホームズものを読んでミステリに夢中になる。1914年に24歳でイギリス航空隊のアーチボルド・クリスティーと結婚し、1920年には長篇『スタイルズ荘の怪事件』で作家デビュー。1926年には謎の失踪を遂げる。様々な臆測が飛び交うが、10日後に発見された
矢沢聖子[ヤザワセイコ]
1951年生、津田塾大学卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
304
本作はクリスティ自身が自作の中から選んだベスト10の中に入っている。ウィリアム・ブレイクの詩句から取られたタイトルも、そしてそれを実に巧みに活かしたプロローグとエピローグにあたる部分の叙述もなかなかの格調の高さを示している。しかし、構成に関して見れば、最後の章段に物語の核心が置かれているのは、いささか残念である。なぜなら、そこにいたるまでの主人公(語り手でもあるマイケル)に魅力が乏しいために、大半に冗長な印象が残るからである。こんな男に知性も豊かなエリーが簡単に籠絡されてしまうだろうか。2025/08/19
MICK KICHI
116
<マンスリー・クリスティー>突然暗がりの中から浮かび上がった邪悪の正体。凍った心が外気に触れた時、恐怖が辺り一面を覆う...。驚愕のストーリー、何人をも許容しないダークな心を抱えて人は甘美な夢に酔えるのか。クリスティーの凄みを真に感じる作品。正義と言えるものが全く存在しない世界、ここにはポアロもマープルもいないのだ...。悪意と恐怖のみ。作者の筆致からは、微塵も顔を出さずある意味、微笑ましいほど牧歌的な世界が何か不穏な空気が見えた瞬間から読者は奈落に落とされる。こんな話があっても良いのか...。唯々呆然。2019/01/17
愛玉子
81
甘やかな喜びに生れつく人もいれば、終わりなき夜に生れつく人もいるーー貧しい若者と富豪の令嬢が恋に落ちた。若者が語る初々しいロマンスは甘く素朴で、しかし最初からどこか不吉な影が差す。ジプシーの呪い、悲劇を予言する老婆、忌まわしい災いの予兆。人は人生の大切な瞬間に気づかないものだーー取り返しがつかなくなるまで。最も欲しかったものはもう手に入れていたのに、それに気づかず自らの手で壊してしまった。分岐点は幾つもあった。夜へ続く道を選んだのは愚かな自分。幻が手をすり抜けていく、まるで呪いのように、罪の報いのように。2021/02/12
yu
70
Kindleにて読了。いやぁ、クリスティの作品ですなぁ。全くもって最低な人間が犯人だった。死ねばいいのにって思うわぁ。2019/06/09
みうか
70
恩田陸さんの作中で「怖い話」として登場したアガサの作品。最後の種明かしまでは、どうもサラサラと上辺だけを撫でているような状態で、腰の据えどころがない。何か違和感があるのにその正体がハッキリしないので、モヤモヤとした不安が付きまとう。しかしこの「違和感」や「不信感」がいかに大事か、そしてそれに気づかないふりをしながら事を進めるといかに危険か、直感に従い正しい道を選ばなかったらどうなるのか、それを大富豪の娘と労働者階級の青年を通して見せてくれる物語である。ロマンスのご利用は計画的に(怖)。2018/01/17
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