内容説明
東西の冷戦でふたつに引き裂かれているヨーロッパ。その西側陣営で科学者たちが次々に失踪していた。いままた、めざましい成果をおさめた科学者ベタートンが行方不明となる。東側の陰謀なのか?英国情報部はベタートンの妻に瓜ふたつの女性スパイとして適地に放つが…会心の冒険スパイ小説、新訳で登場。
著者等紹介
クリスティー,アガサ[クリスティー,アガサ][Christie,Agatha]
1890年、保養地として有名なイギリスのデヴォン州トーキーに生まれる。1914年に24歳でイギリス航空隊のアーチボルド・クリスティーと結婚し、1920年には長篇『スタイルズ荘の怪事件』で作家デビュー。1926年には謎の失踪を遂げる。様々な憶測が飛び交うが、10日後に発見された。1928年にアーチボルドと離婚し、1930年に考古学者のマックス・マローワンに出会い、嵐のようなロマンスののち結婚した。1976年に亡くなるまで、長篇、短篇、戯曲など、その作品群は100以上にのぼる。現在も全世界の読者に愛読されており、その功績をたたえて大英帝国勲章が授与されている
奥村章子[オクムラアキコ]
青山学院大学文学部英米文学科卒、英米文学翻訳家
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感想・レビュー
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aoringo
85
東西冷戦中に一人の科学者が失踪した。その真実を探るため、人生に絶望していた女性をスパイとして送り込む。身元をばらさずに相手方の秘密を探りだそうとするサスペンス。どの人も怪しく思える中でヒロインは孤軍奮闘、がんばる。その結末はさらっと読み流してしまっていた前半に鍵があった。クリスティらしい上品な文章がこの時代によく合っている。面白かったです。2022/11/02
NAO
78
自殺志望の女性を、女スパイに仕立て上げる。誘い文句は、「『間違いなく死ぬに違いない旅』に出ないか」。なんともはや。とても軽い冒険小説。行方不明の科学者を探していた当局の本当の理由がわかるひねりの利いたラストは、さすがクリスティというべきか、なんだかなあというべきか。2019/09/01
Kircheis
53
★★★☆☆ ノンシリーズの冒険物。 クリスティでは定番の、行動的で臨機応変に対応できるセンスのある女性が主人公となって活躍する話。 最初は自殺願望のメソメソした女が、何故か急にスパイ役に任命されるという訳の分からないストーリーに入り込めなかったが、敵の本部に到着してからはハッピーエンドまでノンストップで楽しめた♪( ´▽`) ミステリーじゃないので、全く頭を使わずページをめくれたのが心地よかった。 次からはミステリーでも無心で読もうかな(笑)2019/02/08
yumiha
51
自殺願望を持っていた女性が別人になりすまし、イギリス情報部のスパイとして、敵地に潜入する冒険小説。その別人になりきるための方法が、まず第三者として、なりきる人物の経歴をまとめ、次に一人称で書き直すというもの。ふむふむ。もしかしたらクリスティーの小説作法か?スパイ冒険小説だけれども、ラストでは大どんでん返しがあり、ええ~っ‼️と驚いた。2022/10/18
花乃雪音
28
一般女性がいきなりスパイになる、ここだけなら「トミー&タペンス」のタペンスと同じだが本作の主人公ヒラリーの特徴は自殺を望んでいる点にあったのに話半ばでこれといった切っ掛けもなく生きることを望むようになるのはあっけにとられた。結末まで読むとスパイ小説より推理小説として話を構成した方が良かったように思える。2020/11/12