内容説明
傲慢で美貌の愛妾ノフレトを連れて族長が帰ってきた。その日から、一族のなかには反目や憎しみが。そしてノフレトが崖の小径から転落死を遂げた。これで再び平和が戻ってくるかに思われたが―紀元前二千年のナイル河畔で起こった恐るべき惨劇!エジプトの古代都市を舞台に華麗な世界が展開する異色ミステリ。
著者等紹介
クリスティー,アガサ[クリスティー,アガサ][Christie,Agatha]
1890年、保養地として有名なイギリスのデヴォン州トーキーに生まれる。1914年に24歳でイギリス航空隊のアーチボルド・クリスティーと結婚し、1920年には長篇『スタイルズ荘の怪事件』で作家デビュー。1926年には謎の失踪を遂げる。様々な臆測が飛び交うが、10日後に発見された。1928年にアーチボルドと離婚し、1930年に考古学者のマックス・マローワンに出会い、嵐のようなロマンスののち結婚した。1976年に亡くなるまで、長篇、短篇、戯曲など、その作品群は100以上にのぼる。現在も全世界の読者に愛読されており、その功績をたたえて大英帝国勲章が授与されている
加島祥造[カジマショウゾウ]
1923年生、1947年早稲田大学英文科卒、英米文学翻訳家
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感想・レビュー
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aoringo
85
舞台は何と古代エジプト。古き良き時代のイギリスの上品さを持ちながらその中で殺人事件が起こるのがいつものクリスティだけど、紀元前二千年の彼らもやっていることはあまり違いない。でもミイラの墓所守の設定がしっかり活きていたし、人が死んでも捜査されることなく死霊のせいにされたり、古代エジプト感が出ていて新鮮だった。この時代のミステリーを読むのが初めてなこともあって、愛憎にまみれた人間関係を楽しめました。2020/04/03
Kircheis
72
★★★★☆ 紀元前2千年頃のエジプトを舞台とした異色作。 なじみのない名前の登場人物ばかりで最初は読みにくかったが、すぐに慣れることができた。 ヒロインのレニセンブは、単純で目に見えるものだけを信じるタイプであり、一児の母親とは思えないほど頼りない女だった。正直あまり好きになれず、たまにイライラしながら読んだ。 それより婆ちゃんのエサを応援してた(笑) 人間って大抵本性を隠して生きる生き物だというのには納得だが、さすがに犯人はサイコパス過ぎ…お陰で真相が全然分からんかった(´Д` )2019/01/08
NAO
69
クリスティには珍しい、紀元前二千年のエジプトを舞台にした歴史ミステリ。この話のミソは、今まで誰もが「この人はこういう人だ」と見ていた外見的な性格と真の性格は必ずしも一致しないということ。もちろん見たままの人物もいるが、物語の推移に従って大きな変容を見せる者もいる。どうしてそういった変化がおこったのか、それを推理しながら読むのがおもしろい。2022/10/17
藤月はな(灯れ松明の火)
66
クリスティ作品では異色。何故なら古代エジプトの田舎の一族の内紛を描いているからだ。しかし、時代や場所が変わっても通用するドラマ作りは流石、人間観察と人生の綾に通じたミステリーの女王、アガサ・クリスティ女史である。当主が若く、美しい都会の愛妾を連れて帰ってきてから一族に暗雲が立ち込める。最も不和の種は愛妾が来る前から既に芽吹いていたのだが・・・。現在の女性から見たら自分なりに考えもしないし、地雷を無自覚に踏みまくる最初のレニセンブに苛々し通し。そして卑屈でいて不和を囁くへネットは『熱い空気』の信子のよう。2024/03/19
yukaring
59
紀元前二千年、エジプト・ナイル河畔を舞台にしたクリスティー異色作。少しオカルト的な雰囲気が漂うミステリで時代背景も含めて何度読んでも面白い。墓所僧インホテプが若く美しい愛妾ノフレト連れ帰る。心の邪な彼女は家族に不和の種をばらまくが、ある日彼女の死体が崖下で発見され事故ということになる。しかしそれから家族達が次々に謎の死を遂げノフレトの呪いではないかと皆は恐れおののく。インホテプの娘レニセンブを中心に語られるストーリーは死に対する恐れだけではないエジプトらしい死への憧憬も感じさせるような不思議な印象の物語。2022/09/15