ハヤカワepi文庫<br> 遠い山なみの光 (新版)

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ハヤカワepi文庫
遠い山なみの光 (新版)

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  • サイズ 文庫判/ページ数 304p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784151201172
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

出版社内容情報

英国で暮らす悦子は、娘を喪い、人生を振り返る。戦後の長崎で出会った母娘との記憶はやがて不穏の色を濃くしていく。映画化原作

内容説明

イギリスで暮らす悦子は、娘の自殺に直面した喪失感のなか、故郷の日々に思いを馳せる。戦後の長崎、復興しつつある街で、彼女は佐知子に出会った。娘を一人で育て、男と渡米する夢にすがる佐知子は、現実的な悦子とは対照的に見えた。だが回想するうち、悦子の記憶は揺らぎ、不穏の色を濃くしていく。時代に翻弄されながら自らの道を生きる人々の姿を描いたイシグロのデビュー作。映画化原作。

著者等紹介

イシグロ,カズオ[イシグロ,カズオ]
1954年11月8日長崎生まれ。1960年、5歳のとき、海洋学者の父親の仕事の関係でイギリスに渡り、以降、日本とイギリスのふたつの文化を背景に育つ。その後英国籍を取得した。ケント大学で英文学を、イーストアングリア大学大学院で創作を学ぶ。1982年、本書『遠い山なみの光』で長篇デビューし、王立文学協会賞を受賞、1986年発表の『浮世の画家』でウィットブレッド賞を受賞した。1989年発表の第三長篇『日の名残り』では、イギリス文学の最高峰ブッカー賞に輝いている。2017年にはノーベル文学賞を受賞。2018年に日本の旭日重光章を受章し、2019年には英王室よりナイトの爵位を授与された

小野寺健[オノデラタケシ]
1931年生、2018年没、東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了、横浜市立大学名誉教授、日本大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ケンイチミズバ

81
女性の苦悩と哀しみが繊細に描かれる。戦後、考え方が180度変わったことを嘆き教え子と口論する男は過渡期の象徴だろう。女性は違う。子供を抱える女性は自分のことだけでなくその日を生きなくてはならない。二人とも戦前は良家の子女だったのか、英語が話せ、海外生活の経験やバイオリンを習ったことがあったり。それが今ではうどん屋で働く、噂ではアメリカさんの愛人なのかも。佐知子の幾度も口にする今度こそアメリカに渡れる。トラウマを抱える娘は言動がオカシイ。母娘の身の上を案じ渡米を疑った悦子だったが、自身が佐知子と同じ選択を。2025/07/09

はっせー

62
本書はカズオイシグロさんのデビュー作の新訳である。感情の機微をこんなにも丁寧に描いた作品がデビュー作なの!?と驚く作品😂1950年代長崎。朝鮮特需に沸き、風景や価値観が急激に変わっていく。その変化に戸惑いながらも生きていく悦子と変化に順応し幸せを掴もうとする佐和子。この2人の対比をまず味わえる。だが、単なる二項対立で終わらないのが、カズオイシグロ😆その中に世界の不条理感や隠し続ける想いなどをうまく編み込んでいる。そのため小説の層がめっちゃある!クロワッサンみたいって1人で思っていた😄2025/08/22

NAO

58
映画公開を前に再読。戦争で何もかも無くし、それまでの価値観が崩壊した世界。そんな世界で、自分のアイデンティティを保つのは並大抵のことではない。佐知子や緒方は過去の固定観念に囚われたままのタイプとして描かれている。緒方は過去にしがみついてそこから離れようとせず、佐知子は過去の名声に見合うものをつかもうともがいている。一方で、名家の夫人だったけれども生きるためにうどん屋を始めた藤原さんや悦子はこれから前を向いて生きていく人として描かれている。この話のミソは、アメリカに行きたがっている佐知子の姿が⇒2025/09/01

olive

35
はっきりとした答えはない。答えがないから自分なりに解釈し想像するしかない。それをじっくりと味わう作品だった。80年代イギリスで暮らす悦子が長崎での日々を回想する物語。景子という娘を妊娠中に友達になった佐知子とその娘の万里子との交流。奔放な佐知子と扱いにくいの子の万里子。夫や義父を甲斐甲斐しく世話をする悦子。考えや行動が対比する二人の女性。読み進めていくと...違和感。この違和感が読みどころ!終始...薄暗く静寂な部屋に淡い光が差し込むような静謐な物語に包まれ秘密の世界へと誘われた一冊だった。2025/09/03

kieth文

27
悦子の人生の、戦後の長崎時代とイギリスで長女景子を失ってからの2つの時代を行きつ戻りつしながら物語は進む。敗戦後、国家の体制の転換に日本国民は翻弄される。女性の生き方も諦めと諦念を余儀なくさせられていた。そんな中で足掻く悦子の隣人佐知子は娘の万里子を連れて愛人(アメリカ人)との生活に将来の夢を託そうとする。それに批判的な目を向けていた悦子だったが、、、 想像する余白を残したストーリー展開が面白くて、何か見落とした事がある様な気がして読み返してしまう。これがカズオイシグロの真骨頂なのかな2025/09/05

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