内容説明
祖先が開拓した故郷の土地を捨て苦難と困窮の旅のすえ、約束の地カリフォルニアへとたどり着いたジョード一家。そこで迎えたのは、美しく豊かな果樹園や綿畑と、敵意にさらされながら低賃金のわずかな仕事を奪いあう過酷な日々だった…。歴史の荒波のなかで資本主義に翻弄される人びとの苦境を浮き彫りにし、時代を越えてなお世界じゅうで衰えぬ評価を受けつづける不朽の名作。ピュリッツァー賞受賞。映画化原作。
著者等紹介
スタインベック,ジョン[スタインベック,ジョン] [Steinbeck,John]
作家、脚本家。1902年、カリフォルニア州サリーナスに生まれる。スタンフォード大学在学中から小説家を目指し、35年の『トティーヤ平』で一躍脚光を浴びると、『ハツカネズミと人間』(1937)など次々と問題作を発表した。ピュリッツァー賞を獲得した『怒りの葡萄』(1939)は一部の州で発禁になるなど賛否の激論を呼び、空前の大ベストセラーを記録。52年発表の『エデンの東』(ハヤカワ文庫刊)では、文学的名声を確固たるものとした。なお、62年には長年の功績に対しノーベル文学賞が授与された。68年没
黒原敏行[クロハラトシユキ]
1957年生、東京大学法学部卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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sin
111
「男にとって生きるのは、ぼこんぼこんとぶつ切れでも、女には川の流れのようにずっと続いていく…」これは生きることの物語だ。まるで開拓史の頃のように西を目指した人々を追い詰めるのは日和見な自治体の責任であって資本主義の弊害を云々する、所謂型にとらわれた上っ面の考察はある意味お門違いで共産圏ですら起こりうる悲劇の…いわば社会の本質を問うノンフィクションなのだろう。◆英ガーディアン紙が選ぶ「死ぬまでに読むべき」必読小説1000冊を読破しよう!http://bookmeter.com/c/3348782017/03/11
ペグ
104
黒原訳で読了です。大久保さんの訳とは全く違う訳で(当たり前(≧∀≦))。アメリカン・ニューシネマを観ているようでした。特に第15章のハンバーガー屋の場面は、大好きなペレケーノスやケン・ブルーウンを彷彿とさせる。登場人物もゲィリー・オールドマン、トム・ハーディ(痩せてください)、ハリー・スタイルズ、ウィルソン夫婦は今は亡きロバート・デュバルとフランシス ・マクドーマンド等、馴染みの俳優陣をイメージ。7月から8月にかけて、まるでカタツムリのようなのろのろ読書でしたが、やはり名作でした。2020/08/11
アナーキー靴下
80
圧倒されて言葉にならない。この小説の最終章を含めて総括する言葉が見つからない。その手前までならアメリカの過去を学び頭で考える小説かもしれない。しかし最終章を読んでしまうと、頭だけでは受け止めきれない。上巻で感じたアニミズム的な印象も覆されたが、これをどう表現したら良いのかさえわからない。著者が創作ノートに書いたという「強欲なくそ野郎」が単に資本家を指すなら、何故ここまで多面的に書く必要があったのか不思議でならないが、それこそが、読む前と読んだ後で世界が変わるような、不朽の名作たらしめているのかもしれない。2023/05/06
ちゅんさん
49
読んでくうちにいつのまにか自分もジョード家の一員になっていた。打ちのめされても諦めない、お互い助け合い何とかしようともがく。これは小説だけど作り話ではない、こういうことが実際にいま起きている。凄い小説を読んだ。みんな小説を読もう。2024/04/23
yumiha
48
食べるものにも事欠く極貧の暮らしは、下巻にも続く。「一人で40万haを持っている奴がいるのに、何十万人もの働く気のある農民が飢えている」という不合理。たとえ働ける農場があっても、競わせて賃下げをする。抗議したら、「アカ」呼ばわりをして保安官補が逮捕する。どこまでいってもぬかるみ。どうにもなりまへん(泣)そんな状況でジョード一家の精神的支柱として肝っ玉母さんをクローズアップ。「やることをやるんだよ」という変わらない強さに圧倒される。妊婦の娘ローザシャンは、やっとラストで、その強さを引き継ぐ片鱗を見せるが…。2021/05/12
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- 和書
- 明治裏面史 〈下巻〉