出版社内容情報
ノーベル賞作家の代表作が、25年ぶりの新訳によって蘇る! ピュリッツァー賞受賞作。
内容説明
一九三〇年代、アメリカ中西部の広大な農地は厳しい日照りと砂嵐に見舞われた。作物は甚大な被害を受け、折からの大恐慌に疲弊していた多くの農民たちが、土地を失い貧しい流浪の民となった。オクラホマの小作農ジョード一家もまた、新天地カリフォルニアをめざし改造トラックに家財をつめこんで旅の途につく―苛烈な運命を逞しく生きぬく人びとの姿を描き米文学史上に力強く輝く、ノーベル賞作家の代表作、完全新訳版。
著者等紹介
スタインベック,ジョン[スタインベック,ジョン] [Steinbeck,John]
作家、脚本家。1902年、カリフォルニア州サリーナスに生まれる。スンタフォード大学在学中から小説家を目指し、35年の『トティーヤ平』で一躍脚光を浴びると、『ハツカネズミと人間』(1937)など次々と問題作を発表した。ピュリッツァー賞を獲得した『怒りの葡萄』(1939)は一部の州で発禁になるなど賛否の激論を呼び、空前の大ベストセラーを記録。52年発表の『エデンの東』(ハヤカワ文庫刊)では、文学的名声を確固たるものとした。なお、62年には長年の功績に対しノーベル文学賞が授与された。68年没
黒原敏行[クロハラトシユキ]
1957年生、東京大学法学部卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sin
92
この家族に待ち受ける試練を思うと心が痛くて容易に読み進めることが出来ない。それでも立ち向かう旅路の前を目指す底力や、助け合う姿に…人間本来の強さに…勇気づけられて少しずつ読み進めていくと、資本主義が人を人本来の生きる姿から遠ざける様や、よそ者を警戒して差別する人間の弱さが、また顔を覘かせて更なる憂鬱に落ち込んでしまう。このタイトルの“怒り”はどこへ向かっていくのだろう?◆英ガーディアン紙が選ぶ「死ぬまでに読むべき」必読小説1000冊を読破しよう!http://bookmeter.com/c/3348782017/03/08
アナーキー靴下
81
これはアメリカの神話なのだろうか。土地を愛し耕す時代への郷愁を喚起するにしては荒々しく容赦ない大地、小作人を一方的な弱者とし憐憫を誘うなら「インディアンを殺して追いだした」は不要だったはずだ。アメリカという土地が持つ強烈な霊性ゆえキリスト教的な人間中心主義は真には根付かず、先住民から形を変え受け継がれるアニミズムの対象はウォール街に。人智を超えた存在への畏怖、降りかかる災厄に何度苦しめられても、いつの日かもたらされるであろう恵みへの期待を捨てることができない。資本主義は金ではなく力の信仰なのか。2023/05/05
yumiha
55
読んでいた本の中に本書を取り上げてられていることが二、三度あり、これは読まなければいけないなぁと迫られた気分で読み進む。オクラホマのジョード一家が、小作人として暮らしていた土地から追い出されるように、ルート66を辿ってカリフォルニアへ向かう。追い出されたオクラホマの土地はインディアンから奪った土地で、向かうカリフォルニアもメキシコ人から奪った土地。アメリカちゅう国の黒歴史を見た気分。大手資本家がいかに汚く酷いやり口で、多くの小作人たちを翻弄し収奪してきたのかをジョード一家を通して描き出す。2021/05/10
ちえ
53
世界恐慌後の1930年代アメリカ中西部、住んでいた家を追われ、仕事を求めるためカルフォルニアを目指す数えきれないほどの家族の一つジョード一家。道中彼らに降りかかる苦難の過酷さ。そんな中でもカリフォルニアに着けば仕事が有り安定した生活が出来るという希望に支えられて進むが、近づくにつれ希望していたような場所ではないのでは…という不安が。いつかは読みたい名作だけど難解なのではと思っていたが、とても読みやすく、一家の章と「中間章」と呼ばれる章とが繰り返される構成がまた素晴らしい。下巻へ。2021/03/13
ちゅんさん
44
これでもかとジョードー家に襲いかかる試練。でも彼らが特別なのではない。資本主義への怒りが沸々と湧いてくる。下巻へ2024/03/20