内容説明
小さなバラ色の雲が空から降りて来て、シナモン・シュガーの香りで二人を包みこむ…ボーイ・ミーツ・ガールのときめき。夢多き青年コランと、美しくも繊細な少女クロエに与えられた幸福。だがそれも束の間だった。結婚したばかりのクロエは、肺の中で睡蓮が生長する奇病に取り憑かれていたのだ―パリの片隅ではかない青春の日々を送る若者たちの姿を優しさと諧謔に満ちた笑いで描く、「現代でもっとも悲痛な恋愛小説」。
著者等紹介
ヴィアン,ボリス[ヴィアン,ボリス][Vian,Boris]
パリ郊外生まれ。39歳の若さで死ぬまで、作家、詩人、画家、劇作家、俳優、歌手、ジャズ・トランペッターなど20以上もの分野で旺盛な活躍をみせたマルチ・アーティスト。アメリカのハードボイルド小説、SF、ジャズを愛し、母国への紹介につとめ、同時に多大な影響も受けた。だが、文学者として名声を得るのは死後数年してからのことであった。ヴィアンが“サン=ジェルマン=デ=プレのプリンス”として君臨した時代から見守ってくれたサルトルやボーヴォワール、コクトーといった作家たちの支持によって、60年代後半のフランスは爆発的なヴィアン・ブームに沸いたのである。すべてのルールと理論を拒否し、自由自在な言語表現に徹した彼の文学は、若い世代を中心に現在も広く読まれている
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
64
ボリス・ヴィアンの名前は以前から知っていたが、読むのは初めて。期待を持って読んだのだが、残念ながらとうとう最後まで作品世界に入り込むことができなかった。例えば、クロエが病に倒れた後、2人の医者が登場するが、そのやりとりが全くかみ合っていないと思うのだ。それは、その後の本屋との、そして古道具屋とのやりとりでも同様だ。そうしたナンセンスさをこそ楽しむものなのだろうが、どうもピンとこない。多用される比喩もまた、何を言いたいのかわからない。訳文の日本語に品がない上に、個々の言葉にもまた躍動感が感じられないのだ。2012/09/05
優希
62
束の間の幸福が美しかったです。結婚してすぐに病魔に襲われるというのはどのような気持ちになるのでしょうね。はかない青春を優しく描きながら、不安定な世界にいるような感覚になりましたが、悲痛な恋愛に酔いました。2022/11/02
♪みどりpiyopiyo♪
50
今まで出会ったことのないきらめきに目を奪われ立ちすくんでいるあいだに、いつしか迷路へと導かれ 更なる深みに身体を絡め取られてゆく。世界の混沌ぶりと、恋人達の初々しさ。堪能しました。■このハヤカワ版(1979年 伊東守男訳)と光文社新訳文庫版(2011年 野崎歓訳)を読み比べました。■この版は意味が取りにくく読むのに苦労しました。訳された時代の違い故か単に訳のこなれ感の違いか、若者達の語気や横柄さも随分違って面白かったです。2つの訳で意味が違う箇所も。(1947年 フランス。1979年 伊東守男 訳)(→続2018/02/24
二戸・カルピンチョ
43
美しく可愛い女性と出逢い結ばれ、そして悲しみが蝕んでいく。貧富の差、労働の醜さ、依存性。そんなものに取り付かれさえしなければ、いや、そうなるしかない仕組みでこの世界観は出来上がっている。友情も愛情も満ちているのに、各々が幸せになる事を大事にする物語では、第三者の死が散りばめられている。永遠に取り除くことが出来ない不幸が煙る中、花の香りが溢れかえる。2018/10/13
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
42
肺の中に睡蓮の花が咲く奇病に冒されたクロエとコランの悲痛な恋。ポップで無軌道でシュールでピュアな物語。【サン=ジェルマン=デ=プレのプリンス】として39歳の生涯を駆け抜けたヴィアン。作家の死後、サルトルやボーヴォワール、コクトーなど当時の流行作家の後押しにより、60年代後半のフランスは、爆発的なヴィアンブームに沸いたそうです。曲を奏でると、ハーモニーに対応したカクテルを作ってくれる『ピアノカクテル』に憧れました。良くも悪くも古典の趣きは皆無です。2014/06/29