内容説明
彼女の手は彼から離れ、その体は遠ざかっていった。まるで歩み去るかのように…フリーランスの探偵ルー・グリフィンの目前で、街を震撼させていた連続狙撃魔の銃弾が女性新聞記者を襲った。彼女と出会って、まだ数時間。だがルーの胸に何かが宿った。彼は単独で狙撃魔を追いはじめる!熱き時代と追跡劇を描き、CWA賞候補となった傑作ハードボイルド。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新田新一
17
主人公の探偵ルー・グリフィンの目の前で、女性が射殺されます。彼女は新聞記者で、グリフィンと知り合ったばかりでした。ルーは自力で犯人を探し出そうとして、何回も危険な目にあいます。1960年代を背景にしたハードボイルド。個性的な登場人物が次々と登場して、読み手を惹きつけます。60年代の熱気が蘇る巧みな筆致が好みでした。匂いや色、街の雰囲気が詩的な文章で綴られています。結末で犯人が明かされますが、意外な人物で驚きました。ロス・マクドナルドのような緻密なミステリーではありませんが、謎解きとしても楽しめます。2024/05/12
いそぴ
1
シリーズ7作中邦訳は2作のみ。ただでさえ難解なのに第1、2を飛ばして本品3作目からという暴挙。ハヤカワさん、1、2作もお願いしますよ、と泣きを入れながら読む。なにしろ登場人物多いわ、皆個性的な上それぞれとのなれ初めも関係性も複雑。回想やその後の話など時間軸も自在に移動しつつアメリカの問題をシニカルに突きつける。狙撃による無差別殺人犯を追い詰め退治する話っていうと単純に聞こえますけど、サリスさんすごい曲者です。ミステリ好きより現代文学好き向けかも。スッキリはしないけど、中身が濃く長時間楽しめてお得です。2021/01/09