内容説明
イタリアの大富豪が建てた浜辺の別荘で、当の富豪を含む四人の男女が惨殺された。別荘には最新の警備システムが張りめぐらされ、敷地内は巨大な密室ともいえる状況だった。刑事警察のゼンは事件の調査を命ぜられるが、やがて彼自身の前に謎の殺人者の影が…。英国ミステリ界の次代を担うと期待される新鋭の英国推理作家協会賞、ヨーロッパ・ミステリ賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
279
私のミステリー観が古いのだろうが、本編では事件の犯人や殺害方法を推理するというところには力点がないように思われる。ここでの物語の主要な舞台はサルディーニャなのだが、この島がシチリア以上といってもいいくらいに頑迷固陋の地であるのは意外だった。「沈黙の掟」と「血の復讐」が、この地の人々にあるらしく、小説はこのことを基盤に展開する。物語の前半は複雑だが(シリーズの第3作なので一層に)、終盤の追跡劇は極めてスリリングだ。謎解きに、一応は納得するものの、完璧な密室を掲げた始まりからすればやや拍子抜けの感も否めない。2016/09/05
ケイ
108
前作「ラットキング」に続く刑事ゼンのシリーズ。イギリス人が描く、ヴェネチア生まれのローマの刑事。サルディーニァ島にある、難攻不落で誰も侵入できない造りの豪華な別荘で起こった大量殺人事件の犯人探した。前作を読んでいると、犯人はこの人だろうと当たりはつけられる。しかし、証拠が捏造されたものか本物か、証人は買収されているのか真実を語っているのか、示される人が本当に真犯人なのかが当の刑事にすらわからなくなるイタリアの構造。そして、サルディーニァ島でもシチリアばりの復讐劇が展開され…。最後まで気が抜けない。2016/01/22
まふ
95
堅固な宮殿的邸宅での超富裕重要人物4人の殺害という、いかにも期待できそうな出だしだったのに、物語は直接的な推理に至らずアウレリオ・ゼン警視の身辺日記的な叙述がだらだらと続き、ようやくサルデニア島での別な悪漢との若干の追いかけっこがあったものの、ダイナミックな事件というより地方の私的怨恨が原因という肩透かし的オチで、ガックリ来た。「竜頭蛇尾」「尻すぼみ」がふさわしい評価。これもG1000だが返上してもらいたい気分。2023/07/21
セウテス
91
【イタリア警察ゼン警視】シリーズ第2弾。イタリアのサルディーニャ島の別荘で、4人の男女が射殺された。別荘は、政府と繋がりの在る富豪の持ち物で、防犯設備が完備された密室であった。今回も、密室ミステリと思いきや、容疑者が政府と関係ある人物である事から、別の人間を容疑者にする様に警察に圧力がかかるという物語。謎解きや犯人は、大した事ではない様だ。私の様にミステリは犯人や動機、トリックを推理する事を楽しむ位置の者には、全く違う範囲の物語なのだろう。それならば密室等大きな謎を、如何にもな様に提示して欲しくは無い。 2020/02/24
NAO
63
密室トリックを解き明かすミステリかと思ったが政治ネタのサスペンスで、最後に解き明かされた密室トリックや殺人の動機は、今一つ腑に落ちなかった。アパートの一室に閉じこもって暮らすゼンの母親の描写がやたら多いと思っていたら、事件に大きく関わっている女性が育った環境がゼン母親の環境とひどくよく似ており、ゼンの母親の描写は作品の重要な部分を暗示する伏線であり、作品全体の序奏となっていたのだった。二人の最後は、あまりにも対照的だけれども。2019/03/05
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