出版社内容情報
冬が間近に迫った十一月のある日、ミロのもとに死んだ父親の愛人から手紙が届いた。密会を続ける謎の男女の目的を探ってくれという。好奇心から調査を始めた彼は、やがて思いもよらぬ殺人事件の渦中に。『酔いどれの誇り』に続き、大西部の雄大な自然に抱かれて生きる探偵ミロの姿を詩情豊かに描き出した感動作
内容説明
十一月になると、ここ西部にも万物が凍てつく冬の足音が聞こえてくる。吹きすさぶ風が運んできたかのように、私のもとに一通の手紙が舞いこんだ。死んだ父親の愛人からで、密会を続ける謎の男女の目的を探ってほしいという。好奇心も手伝って、私はその男女を追い始めたが、やがて思いもよらぬ殺人事件の渦中に。『酔いどれの誇り』に続き、大西部の雄大な自然に抱かれて生きる探偵ミロの姿を詩情豊かに描き出した感動作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まふ
81
アメリカ西部の町で生まれ育った裕福な家系のミロドラゴヴィッチが朝鮮戦争を経験して酒とコカインに浸るニヒルな私立探偵業を営んでいるが、ある日父親の愛人だったサラ婆さんから「気になる二人連れ」の調査を依頼され、追いかけているうちに小さな事件から大きな悪へ、さらには国際的組織の絡みにまで拡がる。華々しい銃撃戦があったりしてなかなかワイルドであった。美しい女性陣はいろいろと出てくるが、彼女たちもなかなかしたたかで…。いわゆる普通のハードボイルドとは少し異なる視野と奥行きを持つ印象的な作品だった。⇒2023/03/27
goro@the_booby
51
「いい女はいつも去ってしまうし、二流の女は愛しようがない」と考えてるミロだが、次々に手玉に取られて利用されてしまう。女性キャラクターも秀逸だけど脇を固めるシモンズやアブナーなど事件に付き合わされる男たちも印象に残る。後半に至っても目指す敵が見えてこなかったけど、恐ろしい敵を相手にしていたミロ。乗り込んでいく見せ場の銃撃シーンは息を飲むような映画みたいで引き込まれる。いい女は怖い、そして男は哀しい。2021/08/18
hit4papa
49
ミルトン・チェスター・ミロドラゴヴィッチ三世。通称ミロ。47歳。5回の離婚歴あり。神様が公認している職業 酔っぱらい。ときどき探偵。次々と起こる困難にヘコタレそうになるミロ。すぐさまドラックとアルコールに手が伸びます。捜査方法もスマートさとは程遠いですね。凍てつく寒さの中で右往左往。でも、確実に真相に迫っていきます。かっこよさとは無縁ですが、相手が誰だろうと諦めません。どこか一本筋が通っています。ダメ人間の根っこのところにある男の矜持=ハードボイルドな精神がミロの魅力なのです。ラストはサプライズ!2019/10/10
maja
14
瀕死の若者の瞳はもうひとつの世界に通じる小さな抜け穴のように暗かった。「永遠の春が歌い、乙女の息がハチの巣のように甘くにおう世界、うなりながら飛んでくる矢に向かってぼんやりした鹿が軽やかに跳びこむ世界へ通じる抜け穴のように。彼は今度こそそこへ行きかかっていて、自分でもそれを承知していた。」ベニワー族の若者と視線を重ねるミロ。未開の森と広大な草原を誇り高いベニワー族が失くさざるを得なかったことに悲しみを引き受けている。 2018/08/15
Satoshi
11
アル中でコカイン中毒のダメ人間ミロ探偵の第2弾。前作同様に主人公は無茶苦茶だし、関連人物も情けなくてある意味リアルな感じがする。黒幕は大企業であるのに、その組織のトップは情けない最期をとげる。それでも、主人公とコンビを組むベトナム帰りのシモンズさんとの友情は美しいし、ベニワー族長老の威厳ある描写も素晴らしく、最後まで楽しめる作品である。2016/06/06