内容説明
犯罪の科学捜査を行なうホガッツ研究所で深夜、所長代理のロリマーが殺された。現場は厳重に戸締まりされており、外部から侵入した形跡は見当たらない。冷徹で高慢な被害者は所内の嫌われ者で、誰からも反感を買っていた。多すぎる動機、密室の謎…ダルグリッシュ警視長は周到な尋問と鋭い推理で、犯罪捜査のエキスパートたちの間に生じた殺人事件の複雑な糸を解きほぐしていく。現代ミステリ界の女王が放つ本格傑作。
著者等紹介
青木久恵[アオキヒサエ]
1966年早稲田大学文学部英文科卒、英米文学翻訳家
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
セウテス
86
【ダルグリッシュ警視シリーズ】第6弾。〔再読〕中々すんなりとミステリとは言いにくい作品であるが、これは作者自身が探偵小説の枠組みを建ててはいるものの、人間の心理描写に重点を置いているからだろう。殺人事件において被害者が発見される時、これ程掘り下げて遺体の描写をする作品も類を観ない。謎を解く事よりも罪の重さを表現する為に、探偵が犯人を暴く形式をとっているだけで、犯罪小説という方が合うだろう。早くに犯人の目星はついてしまうので、ミステリとしての期待感は薄れてしまう。求める設定が合うなら、紛れもない名作だろう。2021/03/09
星落秋風五丈原
38
物語はロリマーが殺される前の時間軸から始まる。この男、敵ばかりだ。これだけ動機のある敵がいれば誰が殺してもおかしくない。要は、機会を生かしたのは誰かという事だ。仕事は事件が起これば犯人を見つけて逮捕する事の繰り返しだと割り切っているダルグリッシュだが殺人が社会に与える影響について考えていたりする。研究所の面々はいずれも癖ありだが、中で新人事務官のブレンダ・プリットモアだけが、まだ“汚れちまった哀しみ”を知らず、皆が嫌っていたロリマーの事も尊敬している救われキャラになっている。 2021/10/28
bapaksejahtera
18
シリーズこれ迄ハズレがない。登場人物の数はほどほどであるが、自然な会話を折り込みつつ、地の文章によってその性格が丁寧に書き込まれる。小説冒頭で或る殺人事件が描かれ、ここから地元警察や犯罪科学捜査に当たる研究所の面々が顔を出す。その後この研究所の重要人物で、その傲岸不遜故に嫌われる男が殺される処からが本題。シリーズ主役ダルグリッシュが登場する。次々畳み掛けられるサスペンス。第二の殺人。納得できる犯意と犯行。しかし片手間に読んでは読みこなしにくい。結末の爽快感が乏しく、正月の読書には如何かとも思ってしまった。2023/01/08
のざきち
16
舞台は司法科学研究所。生物部部長のロリマーが殺害される。この男、所内の嫌われ者で多くの者から反感を買っていた。ダルグリッシュ警視長は、この閉鎖空間で入り組んだ、人間関係の糸を解きほぐしていく…今回も微に入り細をうがった描写が重ねられ、少しずつ謎が明らかになっていくのが心地よい。トリックも意外な犯人もありませんが、そこらのミステリには無い濃密な物語を味わえました。片手間はご法度、じっくり読むのが良いです。2020/05/06
KUMAPON
8
シリーズ6冊目。これまでのどの作品よりも面白く読めた。謎解きよりも登場人物たちの背景や心情に重点を置き、隅から隅まで執拗に描写する作風は相変わらずだが、どうやら私の方がこの作風を楽しめる体質に変わってきているようだ。原題は『DEATH OF AN EXPERT WITNESS』で、作中「プロの証人が殺されたということですわね」というセリフもある。邦題はちょっと捻りすぎかな…(思わず手に取りたくなるタイトルではあるが)。本作では警視長に昇格しているダルグリッシュ。引き続き活躍を追っていきたい。2022/07/12
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