内容説明
ある秋の晩、ロンドンのスティーン診療所の地下室で、事務長のボーラムの死体が発見された。彼女は心臓をノミで一突きされ、木彫りの人形を胸に乗せて横たわっていた。ダルグリッシュ警視が調べると、死亡推定時に、建物に出入りした者はなく、容疑者は内部の者に限定された。尋問の結果、ダルグリッシュはある人物の犯行と確信するが、事件は意外な展開を…現代ミステリ界の頂点に立つ著者の初期の意欲作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
セウテス
63
ダルグリッシュ警視シリーズ第2弾。ロンドンに在るスティーン診療所の地下室で、そこの事務長のイーニッドが殺害される。診療時間内であり直ぐに発見され建物を封鎖した事から、治療を受けていた二人の患者をのぞけば、容疑者は診療所のスタッフだけであった。名探偵は特別な存在という事に対する、作者の反発の様に感じられる。作者なりの、リアルなミステリと言う事だろう。終盤のスピード感や緊張感は、本作をピシッと締めてくれて中々良いと思う。悪人の思い通りにはさせない結末に歓喜し、そんな人間に期待する愚か者が在る事に、悲しくなる。2018/05/19
星落秋風五丈原
43
シリーズものでは、必ず名探偵の失敗談も登場させる。ならば名探偵の系譜に連なるダルグリッシュ警視も、という訳で、本編では“これまで捜査で失敗したことがない”という触れ込みの彼が犯人を見誤ってしまう。早めに失敗談を出して読者の反応を見たかったのだろうか。ダルグリッシュ警視が出版社のパーティに出席していると事件の電話が。自分の詩才について客観的に評価できているダルグリッシュ。ダルグリッシュちゃんと推理するんだけどパーティで出会ったデボラとつきあえるかな?と気になっててかわいいぞ。2021/10/27
bapaksejahtera
17
シリーズ第一作「女の顔を覆え」第四作「ナイチンゲールの屍衣」に続いて読む。ロンドン郊外の富裕層向けの精神科を中心とした施設で、謹厳な事務執行で皆に煙たがられている女性事務長が殺されているのが見つかる。発見後まもなく医院は封鎖された事から容疑者は限られる。早速警視庁からダルグリッシュ警視が呼ばれ捜査に当たる。関係者は少なく読者にも犯人の目星はつくが、作者の描写は極めて周到で、退屈する事はない。本作は評価の高い既読作品に比べて地味だが、芝居がかった謎解きはなく、極めて自然な捜査が描かれる。本作が最も気に入った2022/11/30
おくちゃん
14
PDジェイムスの2冊目で初のダルグリッシュ警視物。ジミだけど引き込まれました。上手く言えないがストーリーや登場人物のキャラの描き方がしっかりしている?という感じかな。2023/03/24
花乃雪音
13
ダルグリッシュ警視シリーズ第二作目、ダルグリッシュ警視の失敗というタイトルが頭に浮かんだ。これまで捜査で失敗したことがないと自負するダルグリッシュが犯人を見誤る経験をする。推理小説として裏(意外な犯人)の裏をかいたら意外性のない犯人になってしまった。そこにリアリティを表現したのならばダルグリッシュは捜査の際、順当に疑わしき人物から疑うことにこそリアリティがあると思ってしまう。2019/06/16