内容説明
私立探偵のフィリップ・マーロウは、スターンウッド家の執事ノリスからの失踪人捜索の依頼を受けて、その邸を再び訪れる。当主であった将軍はすでに亡く、長女ヴィヴィアンは妹のカーメンをサナトリウムに入院させていたが、精神を病んでいる彼女が突然に姿を消したのだ。だが、行方を追い始めたマーロウの前に、巨大な権力が立ちはだかる。ハードボイルドの巨匠が贈る、レイモンド・チャンドラー『大いなる眠り』の続篇。
著者等紹介
石田善彦[イシダヨシヒコ]
1970年早稲田大学法学部卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Kircheis
272
★★☆☆☆ パーカーの描く『大いなる眠り』の続編。 マーロウを無骨で一本気なタフガイとして見事に描いたと思うが、やはりチャンドラーの醸し出す儚さや詩的美しさは出せていなかったように感じる。 もちろん作家ごとに違ってて良いのだが、あえてマーロウを主人公にする必要はなかった気がする。また『大いなる眠り』のエッセンスを前面的に出し過ぎて、読んだことのない読者には『何だこれ?』と思われてしまいそう。 スペンサーと違い、頻繁にボコボコにされるマーロウの姿に古き良きハードボイルドの姿を思い出せたのは良かった。2022/10/24
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
48
ハードボイルドの代表的作家レイモンド・チャンドラー(さん付けは似合わないので呼び捨て)。彼の長篇処女作『大いなる眠り』のその後をスペンサーシリーズのパーカー氏が描いた探偵物語。初期のスペンサーに似たマッチョでフェミニストのフィリップ・マーロウが巨悪に挑みます。『大いなる眠り』に登場した富豪の娘姉妹が物語の鍵。愛くるしいニンフォマニア、カーリーが療養中のサナトリウムから失踪し、たった1ドル+経費で彼女を探す仕事を請け負ったマーロウ。随所に前作からの引用も織り交ぜられていて“師弟愛”に満ちた良作だと思います。2014/07/23
催涙雨
39
「本書はチャンドラーの処女長篇『大いなる眠り』の完全なる続篇となっているのである。それもプロローグでは『大いなる眠り』のラストシーンをそのまま借用し、物語の途中でも回想場面として随所に前作を引用するという凝りようだ。」そういう作品。だから大いなる眠りも再読した。思ったことの大部分は上記をはじめおおよそ解説に書いてある通り。事件のスケールが大きくその筋も明快、そのうえ孤高なイメージの強いマーロウがエディ・マースとバディを組む。内容に関してはチャンドラーの作風とは異なっているように思うが、文章の端々から感じ2018/08/09
ツバメマン★こち亀読破中
22
チャンドラー『大いなる眠り』の続編をパーカーが書いたというだけで興奮します。約50年の時を隔てて書かれたこれらの作品を立て続けに読みましたが、こちらは(良い意味で)見事にパーカー版のマーロウになっていました(パーカーが書いたので当たり前ですが~w)。前作の設定が細かい部分でも引き継がれているところがカッコいい!大好きなスペンサーシリーズはフィリップ・マーロウから多大な影響を受けているのだなと今更ながら実感出来ました。この読み方はオススメ!2016/02/17
タナー
11
チャンドラーの未完の遺作「プードルス・プリングス物語」を描き継いで完成させたR.B.パーカーが、フィリップ・マーロウを主人公に据え新たに描いた作品。ストーリーとしては「大いなる眠り」の続編という形をとっている。パーカー自身チャンドラーの影響を多大に受けていて、深く研究もしていたであろうことが窺える。スペンサーものとは違い、マーロウの特徴をまるでチャンドラーが描いたかのように精緻に描いていると思う。私自身の要望を言うなら、スペンサーものと同じ翻訳家に訳して欲しかった。ハードボイルドな雰囲気が、(続く)2022/05/20