内容説明
戦争が終わり、平和をとりもどしたロンドンの街角で、2人の女が再会した。大戦中はともに空軍司令部に勤務していたが、今は2人とも相手を見つけて結婚していた。一方の女は公務員の夫のつましい給料で不自由な生活に耐えており、片一方の女は富豪の夫の金を湯水のごとく使い、しかも不倫の真っ最中だった。対照的な2人には、しかしひとつだけ共通点があった。自分の夫がうとましくてならなかったのだ。そして、片方の女がある危険な計画を耳打ちしたとき、運命の歯車がひそかに、ことりと動き始めた。強烈なサスペンスと意外性の最新傑作。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
J・P・フリーマン
12
殺人を依頼した女と殺人を請け負った女の、心理下での静かな攻防が印象的でした。最初はてっきり交換殺人の話かを思いましたが、アントニアの二枚舌も相まって、途中から展開が読めず続きを気にしながら読み進めました。2020/08/10
きりん
9
結末は予想できる、けど、そんなことどうでもいいくらい、いやぁ読ませる。これの亜種みたいなのは結構あるけど、ラヴゼイさんさすがのストーリーテラーぶり。大戦直後、軍で一緒に働いてただけの繋がりの、対照的な女2人のヒリヒリするようなやり取り。これを男が描けてるのが凄いなと思ったら、奥さんの多大なる助言があったと後書きにあった。心理描写のみならず、おいしそうな食事の用意、ミンクや下着など、細かい部分からも感じ取れる女の気持ちがとてもよかった。2024/08/18
おくちゃん
9
ハラハラドキドキの女性2人の心理戦でした。偶然が悲劇をもたらした。2021/04/11
bapaksejahtera
7
ピーター・ラヴゼイ作品のうちシリーズ物ではなく単作に分類される。サスペンスと呼んで良いのだろうが、喜劇性も強い。イギリス伝統の味と言ってよいのか。やむなく犯罪に巻き込まれる弱い個人の側から、その露見までの恐怖を描くという趣向である。舞台はドイツの爆撃で疲弊し、多くの瓦礫が散在するロンドンである。歴史風俗という意味で強く興味を惹かれる。ともかくもこの作家の作風の多様さとストーリーテラーとしての力量に舌を巻く。2021/02/04
moe
3
読み始めたら止まらなくなって一気読みでした。話の展開がちょっと強引でついていけないところもありましたが、二人の女性の駆け引きに目が離せませんでした。他の作品も読んでみたいです。2010/12/23