感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
セウテス
58
描かれているのは、夫に嫌気を感じている妻と放浪の末たまたま立ち寄った若い男、そして起こる夫殺しです。最初に読んだ時は、サスペンス満載のハードボイルドだと思いました。それからジェシカ・ラングが妻役の映画を観たのですが、彼女の美しさは勿論強烈なエロチズムを感じて、殺人にまで到ってしまう愛の物語だと思いました。この作品は四回も映画化されています。イタリアの名匠ルキノ・ヴィスコンティによる作品は、人間の情の物語を描いていました。改めて読みますと、見落としていた新たな魅力を発見して、その印象が変わる珍しい作品です。2015/05/21
goro@the_booby
43
愛の物語でありました。お互いを必要とした二人。いつの時代も人生を狂わせるのは愛なのだろうけど、分っていても止められない。これと同じシチュエーションでニュースになれば「アホや、バカや」と思うけど何故、この物語では切なくなるのでしょうか。二人の事は二人にしかわからんのやろうなぁ~。2016/04/08
S.Mori
28
浮浪者として生きているフランクは、ある時ギリシア人の食堂に雇われます。そこにはコーラと言う名前の色っぽい妻がいて、フランクと彼女は不貞を働く関係に陥ってしまい、コーラの夫の殺害を企むのですが……。こう書くとありふれた三流映画のようですが、この小説は第一級の犯罪小説です。丸谷才一がカミュの『異邦人』はこの小説に影響を受けていると書いたエッセイを読んだことがあります。その内容に納得。男女の愛欲の業と現代社会の閉塞状況を鮮やかに描き出します。結末がぐっときます。『異邦人』のほど挑戦的でなく、人間味があります。2020/08/24
うーちゃん
22
いきなり余談ですが、捻りに捻った、というわけでもないのに、やたらインパクトのあるかっこいいタイトルって、やっぱり作者のセンスだよなあ、と思う。「北北西に進路を取れ」とか、「なぜ、エヴァンスに頼まなかったのか?」とか、「9マイルは遠すぎる」とか!この作品も然りで。しかも、このタイトルには非常にトリッキーな意味が含んであって、改めて感心。簡潔な文体と 嵐のようなバイオレンスは、古典であっても楽しめる。若さと退廃のラブスト―リーとして読むのもあり。2013/02/17
きゃれら
20
参った。すごい。表紙になっているジェシカ・ラングとジャック・ニコルソンの映画を観たし、それに合わせて本書を買って読んだ。映画の画面には刺激を受けたが、原作を読んだら結局何が面白いのかわからなかった記憶がある。なのに今回はノックアウト。まず、文体。そして、キャラクター。さらに、息をつかせない展開の速さと意外性。あってはならないタイミングで絶対にダメな二人が出会って純愛に殉じた物語だ。ロミオとジュリエットとは違う形の自滅だが、イギリスの貴族社会とアメリカの性とお金の社会の違いでしかない。新訳も読んでみたい。2024/10/24