感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
セウテス
86
謎解きミステリではなく、敢えて言うなら「善意という心理サスペンス」となる。読み終わると、心がほんわり温かくなる事間違いなし。前半、55歳の主人公ケネスが20歳以上も若い女性と結婚し、事故で足に後遺症が残る事などから、色々と思いを巡らし悩む心理劇が進む。ところが後半、その他の人物が続々と登場し、彼ら第3者により物語の見方ががらりと変わってくる。薬も量が多すぎれば毒薬となってしまう様に、人の善意も多すぎれば同じ事に成りかねない。ミステリ好きなら、是非とも読んで欲しい傑作。こんな切り口のサスペンス、他にはない。2018/08/01
くさてる
30
毒が入った小瓶のゆくえを探す、くらいの筋しか知らずに読み始めたので、いったいどういう方向で話が進んでいくのか見当もつかずに進んでいく展開が面白かった。絵に描いたような悪人は存在せず、あくまで善意の(でもちょっと変わってたりする)人々による協力プレイの流れが楽しくて、ハラハラ具合もちょうど良い。良かったです。2022/05/29
藤月はな(灯れ松明の火)
30
事故で脚を負傷して、齢を取ってから恋した妻が浮気していると妹、エセルに聞かされ、「死のう」と決意したケネス。ところが自殺を思い留まってから、盗み出した毒薬が行方不明になってしまったことに気づく。かくして毒薬で誰も死なせないためにケネス達の捜索は始まった!ケネスの事情を知ってケネスに的確なアドバイスと共感を与えた皆が本当に素敵すぎます><そしてケネスが知ったかぶりの空回りの善意の持ち主、エセルを「自分たちの自信を失わせた毒薬」と称したのが上手い。最後の落としどころも一人を抜いて読者もケネスも幸せになります。2014/01/11
みなみ
23
23歳年下の女性と結婚した教師が、妻の浮気を疑い、自殺しようと毒薬の小瓶を入手したところ、いつの間にか失くしてしまった小瓶の行方を探すサスペンス。根っからの悪人が登場せず、善意で協力しようとする人達のドタバタがコミカルで、サスペンスとされつつも面白かった。全てを理解しているわけではないのに、表面的なところで皮肉を言うのはやめようと特定の登場人物の描写を見て感じつつ読了。2023/05/06
yumiko
20
なんて楽しく愛らしくスリリングで泣かせるサスペンス!(絶版なのがまた泣かせる…(T_T)ある心の迷いから、年の離れた妻を残し自殺を決意したギブソン氏。ところが手に入れた毒薬を、その迷いに迷う心ゆえどこかに置き忘れてしまう…次から次へと善意の人々が繋がり一つの車に乗り合わせ、賑やかに毒薬の小瓶を探し回るさまは文中の言葉通りまさに童話「金の鵞鳥」のよう。現実は辛く厳しいだけではないと気付かせてくれる、心温まるミステリー。「東西ミステリーベスト100」76位の名作。こういう作品は是非とも残さなくちゃ!2014/08/06