出版社内容情報
その店が出す料理はまさに芸術……忘れがたい後味を残す表題作はじめ傑作揃いの短篇集
内容説明
まったく何ともいいようのないうまさだった―隠れ家レストラン“スビローズ”で供される料理はどれもが絶品ばかり。雇い主ラフラーとともに店の常連となったコステインは、滅多に出ないという「特別料理」に焦がれるようになるが…。エラリイ・クイーンが絶賛した戦慄を呼ぶ表題作をはじめ、アメリカ探偵作家クラブ賞受賞作「パーティーの夜」など、語りの妙と優れた心理描写を堪能できる十篇を収録した傑作短篇集!
著者等紹介
エリン,スタンリイ[エリン,スタンリイ] [Ellin,Stanley]
1916年ニューヨーク生まれ。大学卒業後にさまざまな職業を経験しながら小説の執筆をし、1947年に『EQMM』誌の第3回短篇コンテストで特別賞を獲得した「特別料理」で作家デビュー。1955年と1957年にはアメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞の最優秀短篇賞を受賞。長篇においても活躍し、1959年にMWA賞最優秀長篇賞を受賞した『第八の地獄』、『鏡よ、鏡』などを著した。1981年にMWA賞巨匠賞を受賞。1986年没
田中融二[タナカユウジ]
東京商科大学卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐々陽太朗(K.Tsubota)
113
料理にはいろいろある。熱いもの、冷たいもの、甘いもの、辛いもの、苦いもの。スタンリイ・エリンの『特別料理』は後味の悪さを楽しむものだ。いったい後味の悪さを楽しむことなどできようか。それを実現してしまうのがスタンリイ・エリンなのだ。本書には十篇の短編が収められている。ミステリ仕立てで一応の謎は用意されている。しかし、その何篇かは読者に結末の予測がついている。そうではあっても読者は結末まで読まずにはいられない。不思議なことに読者は予測通りの(好ましからざる)結末まで読み進めて満足するのである。2018/06/30
HANA
68
どの短編も悪意と嘲笑でたっぷりと味付けがなされていて。最初の表題作は原材料名に見覚えがあって残念ながらオチは予想がついたのだが、この作品の神髄はそんな所ではなかった。そうなるだろうな、と予想させつつも決定的な事は何一つ書かれず、全てを読者の想像に委ねる。これが堪らなく怖い。同様の事はリドルストーリーの「決断の時」にも共通しており、こちらは緊迫感がただ事じゃないし。「君にそっくり」「壁をへだてた目撃者」はひたすら後味が悪い。収録策全てが緊迫感と皮肉に包まれていて、一頁たりとも目が離せない一冊であった。2016/04/19
まこみや
51
昭和57年発行の『異色作家短篇集2 特別料理』で読んだ。「キリッと冷えたドライ・ジンとライムジュースを半分ずつ、他には何も入れない」(@テリー・レノックス)本物のギムレットを口にしたときのように、鋭いキレのある突き刺さる味わいの短篇だった。コロナ禍のなか長雨のつづく、いぶせき夕辺に気持ちをしゃんとさせてくれた。2021/08/14
星落秋風五丈原
48
コステインは雇主ラフラーに見込まれて隠れ家レストラン“スビローズ”に連れて行かれる。メニューは一つきり、調味料もなしという風変わりだが、供される料理はどれもが絶品ばかり。コステインとラフラーは滅多に出ないという「特別料理」を味わい夢中になる。材料はラフラー言うところのアミルスタン羊らしいが、スピローははっきり答えない。これだけなら謎めいたレストランに通う二人のほのぼのグルメ小説なのだが、そこここに不穏の種が。常連客はほぼ固定だが、ある時から来なくなったメンバーがいて、その後に特別料理が供される。2022/07/16
いっくん
46
『特別料理』アミルスタン羊!『クリスマス・イブの凶事』二人の姉弟。弟の妻が亡くなり…。弟夫婦思いの姉だと思っていたら! 『アプルビー氏の乱れなき世界』乱歩の作品に出てきそうな癖のあるアプルビー氏。そんなに上手くいくのか?『君にそっくり』急いては事を仕損じる!『壁をへだてた目撃者』“人間椅子”の壁版だと思ってたら…。41作の短編(内10編は本書)全て読んでみたい!何故か、どの作品にも、仄かに乱歩の“匂い”がしたりして、上質な粒揃いの短編集でした(^_^*) 2019/02/15