内容説明
自殺と見せかけて妻を殺し、莫大な保険金を欺し取る―その戦慄の計画を考えついたのは、ラヴィネルの愛人の医師リュシエーヌだった。しがないセールスマンのラヴィネルにとって、彼女と暮らすためには他に方法はない。完璧に練り上げた計画は成功した。しかし、その直後、想像もできない恐ろしい事件が…予測不可能なストーリー展開、あまりに衝撃的な結末。あらゆる恐怖の原点となった、サスペンス小説の不朽の名作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
26
愛人で男のような風貌のリュシエールと妻で「女」を体現した風貌を持つミレイユ。妻を愛人の手を借りて殺し、保険金を受け取ろうとしたフェルナンだが殺したはずの妻が消え、直筆の手紙や目撃談などによって自分すらも信じられない妄想に追い詰められていく。男の自分勝手なロマンシズムしか見ない馬鹿な男は嫌いなのでその性質を逆手に取った展開に思わず、喝采を挙げていました。皆川博子さんの挙げられていた作品も読んでみたいです。2013/03/17
うーちゃん
15
映画観たことあるけど相違点も多く、特に結末は原作のほうが好み。最後の一行、ある人の台詞で終わるのだが、この底意地の悪さ、これぞフレンチ・ノワール。トリックらしいトリックはないに等しいが、主人公をニューロティックに追い詰めていく展開の独特な閉塞感に、息が苦しくなるようだった。96年のリメイク版映画は微妙な評価だとは思うけど、シャロン・ストーンは原作のリュシエーヌにぴったりだ。2022/11/19
みみずく
14
何度も映画化されたミステリらしく堂々とした風格が感じられた。セールスマンの男が愛人の医者と共謀して妻を殺す保険金殺人を目論む。この愛人関係の二人がどうしても愛しあっていとは思えず…そこがまず謎だった。殺人を犯したことで死体を棄てたりその後のアリバイ作りなどで疲弊する男。そこから思いも寄らない展開で一人ますます取り乱していく男。愛人もあてにならず、真っ暗な部屋で、物音に神経を集中させていたら、何かが近づいてきた…。最後まで不気味な和音が鳴り続けているような作品だった。2014/06/16
bapaksejahtera
13
1952年作。55年仏96年米国で映画化されており、カバーに後者の物らしい写真が載る。映画とは設定がかなり違っているらしく、男の登場人物の写真は太って見え、原作のように蜘蛛を見て卒倒する男には見えない。女医と浮気をしている男が、女医に唆されて妻を殺そうとする。自殺に装った死体を自宅に捨てるが、いつの間にかそれが消える。続いて起こる恐怖が描かれる。女医が一番剣呑であり、この男との関係をどうする算段だったのか気になったし、検死解剖を想定するとやや弱いのではないかと思ったが、十分に堪能できた。映画二作も観たい。2023/12/24
マヌヌ2号
8
やっぱりフランスミステリは最高だぜ。保険金目当てで主人公と彼の愛人が妻を殺害し……という導入部からどんどん話が予想外の方向に転がっていくのに釣られて、中盤からはほぼ一気読みしました。何と言っても、提示される謎が魅力的すぐる。そして、謎に翻弄される主人公の内面描写もまたすごい。彼の不安定な心理を追っていると、こちらまでおかしくなってきそうになってきます。特にエピローグ手前の文章には鬼気迫るものがあって、ここを読めただけでも本作を読んだ意味はあったなと。背筋が凍るような解決の衝撃も忘れ難い。面白かったです2018/05/19