感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
114
アンブラー二冊目。解説は江戸川乱歩。同時代の三大ミステリ作家として、グレアム・グリーン シムノン、そしてアンブラーをあげていて、当時未翻訳だったのはアンブラーだったそうだ。乱歩の言うように、ミステリに新しいものを持ちこんだのは間違いないだろう。ミステリなのに、先へ先へと急ぐより、じっくり読み込みたい展開。「あるスパイの墓碑銘」のように、二つの大戦の間の不穏な時代が描かれ、またユーゴスラビアやブルガリなど東欧が出てくる。実はこの辺りはドイツとイタリアの間にあるということに今更ながら気付いた。2016/05/23
扉のこちら側
68
初読。2015年1009冊め。【46/G1000】イスタンブールを訪れた英国人小説家の主人公が、暗殺・殺人・スパイ・麻薬密売と欧州を股にかけた亡き犯罪者・ディミトリオスの足跡をたどる。やがてこの男の過去を追っているのは自分一人ではないことに気づき…という、スパイ小説。ディミトリオスの事件に関する関係者の証言を中心に進むため派手さはないが、1920年代当時の欧州情勢にからめたディミトリオスの暗躍が次第に明らかになっていく展開がおもしろく飽きなかった。江戸川乱歩が解説を書いている。2015/08/23
NAO
64
小説家ラティマーが過去にディミトリオスと関わった関係者たちを訪ねて行くことで、少しずつディミトリオスの姿が明らかになっていく。話としては派手さはないが、1920年代のヨーロッパの社会情勢・犯罪事情が詳細に描かれていて、ノンフィクションを読んでいるようだ。地道なラティマーの情報収集の合間に、襲われかけたり、どんでん返しがあったりと、単調になりがちな話も、飽きることなく読めた。ラティマーが出会うのは程度の差はあれ誰もが同種の匂いがする者ばかりで、裏社会とは無関係のラティマーの無邪気さが際立っている。 2018/07/15
NORI
9
英人小説家ラティマーが犯罪者ディミトリオスの死体を見て、彼がどのようにして亡くなったのかを興味を持ったところから少しずつ話しが進んでいきます。過去を追ううちにディミトリオスを追う人物と一緒に行動するようになったりとスピード感があって面白かったです!ハードボイルドな感じのスパイ小説でした!2016/04/24
elf51@禅-NEKOMETAL
8
史上最高の推理小説100冊の1冊で,英国では24位,アメリカでは17位に選出されている。古いしなぁ,スパイ小説だしなぁ,そもそも売ってねーし,と思いつつ。だが,意外に面白い。探偵小説作家が,国際犯罪者の死体を警察で見てその人物に興味を持ち,跡をたどっていくという。タイトルのディミトリオスは死んでいるので脇役だが,舞台はヨーロッパ全般,金貸し殺人事件,フランスの麻薬事件からベオグラードのスパイ,ブルガリアの暗殺事件まで拡がる。政治情勢の分析がなかなか読ませる。1939年出版,スパイ小説の礎だそう。2023/12/04