感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
537
アメリカでの出版が1942年、日本に初めて翻訳紹介されたのが'55年。随分と古い本なのだ。にも関らず'86年度「東西ミステリーベスト100」で第2位、'91年度「読者が選ぶ海外ミステリ・ベスト100」で首位。私の持っているハヤカワ文庫は’76年4月初版で2012年11月46刷と依然として人気作のようだ。たしかに読んでいて面白い。独特のスピード感のあるリズムで読者をリードしてゆく。ただ、古さもまた否めない。まず、警察の初動捜査のいい加減さ、そして連続した事件にも偶然性の余地が多すぎることなど不満は残る。2018/10/27
サム・ミイラ
226
これぞ名作。そうこれこそが名作。男は親友の冤罪を晴らす事は出来るのか。死刑の執行日は刻々と迫る。どんでん返しはかくあるべき。それまでの謎も疑問も全てが一瞬に氷解する。たった一頁、たった一行に鳥肌。そして読了後じわじわと押し寄せる戦慄と感動。亡き母の勧めで小学生の頃読んだ幻の女。しかし理解は出来てはいなかった。犯行の動機が男と女の問題だったからか。読み返せば現代にも通ずる物語。勿論テレビも携帯もまだない時代。だが人の心はなにも変わってはいない。この小説が時代を超えて世界中の人々に愛される理由がそこにある。2017/05/29
遥かなる想い
211
書店に行って、何となく海外の古典的ミステリの名作を読みたいと、急に思い立ち、学生時代に読んで以来、久しぶりにこの本を 読んだ。「夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は 苦かった・・」で 始まるこの本は久しぶりに読んでも おもしろく、1991年に実施された -「読者が選ぶ海外ミステリベスト100」で 堂々の1位になったのもわかる気がする。2010/05/15
Tetchy
172
古くは古書店で原書と遭遇した乱歩が、他人が既に購入予定で採り置きしていたものを横取りしてまで読んで、大絶賛した本書。また「『幻の女』を読んでいない者は幸せである。あの素晴らしい想いを堪能できるのだから」と誰かが評するまでの大傑作。有名な冒頭の美文で始まり、最後は驚愕のため、世界が崩れる音が聞こえた。理解するのに何度も読み返した。やはり傑作は傑作であった。しかし、私的な感想を云えば、最後に幻の女の正体が判る事は、蛇足ではないだろうか。幻の女は最後の最後まで幻の女であって欲しかった。これが正直な感想である。2009/08/10
佐々陽太朗(K.Tsubota)
168
久しぶりに再読。「夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった」の書き出しで始まるミステリの名作。なぜ?なぜ?なぜ?の繰り返し、なぜ?なぜ?なぜ?の積み重ねの末、フラストレーションMAXIMUM状態での大どんでん返し。これはもうミステリの古典といって良い風格を備えています。次は『暁の死線』を読もう。 2014/12/18