内容説明
密室で射殺された元判事の死体の傍らには、拳銃を握りしめた青年がたたずんでいた。しかし、被害者を襲った凶弾は青年の銃から発射されたものではなかった…。この不可解で錯綜した事件に挑むマーキス大佐は、不可能犯罪の巨匠が創造したシリーズ探偵マーチ大佐のプロトタイプ。従来の簡約版では、エラリイ・クイーンのひとりフレデリック・ダネイにより大幅に削除されていた部分を、完全復元した待望のオリジナル版。
著者等紹介
ディクスン,カーター[ディクスン,カーター][Dickson,Carter]
1906年、ペンシルヴァニア州生まれ。30年、アンリ・バンコランが活躍する長篇第1作『夜歩く』をジョン・ディクスン・カー名義で発表。33年、『妖女の隠れ家』に初登場した名探偵ギデオン・フェルが人気を集め、『三つの棺』(35)でのフェル博士の「密室講義」はファンに高く評価された。またカーター・ディクスン名義でも、名探偵ヘンリー・メリヴェール(H・M)卿を生み出した。江戸川乱歩はカーを絶賛し、現在でも日本の現代本格作家に愛読者が多い
田口俊樹[タグチトシキ]
1950年生、早稲田大学文学部卒、英米文学翻訳家
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
セウテス
79
【マーチ大佐シリーズ】プロトタイプと言える、ロンドン警視庁警視監マーキス大佐作品。警察が警備する元判事の邸宅で、2発の銃声が響きわたる。刑事が駆けつけると、密室である部屋の中に、射殺された元判事と銃を手にした男がいた。しかし遺体から取り出された銃弾は、男の持つ銃から撃たれたものではなく、更にはこの銃からは1発の銃弾しか発射されていない事がわかる。新たな事実が出てくる度に、また新たな謎が現れる展開の妙には引き込まれてしまう。ラストで自信満々の犯人が追い詰められていく様は見応えありで、これぞ探偵小説の良さだ。2020/11/21
Kiyoshi Utsugi
35
原題は「THE THIRD BULLET」で、1937年の作品。 カーター・ディクスンお得意の密室殺人もので、元判事のチャールズ・モートレイクが自分の部屋の中(これが密室)で、射殺されます。その近くには拳銃を持った若者ゲイブリエル・ホワイトが… ただ、被害者から摘出された弾から若者が撃った銃から発射されたものではないことが分かります。 本作品での探偵役は、ロンドン警視庁警視監のマーキス大佐。 意外と言うと失礼なんですが、面白かったです。探偵役がスーパーマンでもなく、ごく普通の人なのがよかったのかも。2022/05/19
ちどり
21
退官判事に恨みを持っていた、青年ホワイトは元判事の家に侵入し 発砲をする。だがその銃声は二つあった。元判事の娘が警察に通報し、発砲後に密室の現場に到着し、青年を逮捕するも彼は銃を持ちながら何故か心底呆けていた。事件は早期解決かと思いきや、犯行現場のツボの中には謎の第二の銃が入っていた。調査の末、死因の原因である銃はまだ見ぬ第三の銃 空気銃で撃たれて死んだのだったと判明した…この作品で素晴らしいところが、犯人が最後 本当に根っからの悪人らしいセリフを吐くシーンは逆に賛美を与えたいほどの悪役ぶりでした2014/11/16
Tetchy
15
物語の謎自体、シンプルながら、どこか辻褄の合わない論理の違和感でどんどん話を膨らませていく作品で、読中、セイヤーズの作品を想起した。今回は登場人物たちがそれぞれ何らかの嘘をついていることがテーマか。嘘をついていることで殺人計画が予想外の方向転換を余儀なくされた結果、2発の銃声に3種類の銃弾が発生するという奇妙な事件を招く。この、どうにもすわりが悪い状況設定を最後に論理で解き明かしていくのは素晴らしい。新たな事実が発覚するにつれ、また新たな謎が生まれる畳み掛け方が絶妙だった。2009/10/22
ホームズ
13
3丁の銃から発射された銃弾の謎。2発の銃声の謎など結構面白いとは思った(笑)でも好みから行くとあまり探偵役がドタバタしていないし・・・。まあ楽しめたので良かったかな(笑)2010/08/06