出版社内容情報
不幸な過去を抱えた家で起きる毒殺事件。エラリイを苦しめる、錯綜した謎と過去の呪縛
内容説明
結婚式直前に失踪したジムが、突如ライツヴィルの町に房ってきた。三年の間じっと彼の帰りを待っていた婚約者のノーラと無事に式を挙げ、ようやく幸福な日々が始まったかに見えた。ところがある日、ノーラは夫の持ち物から奇妙な手紙を見つける。そこには妻の死を知らせる文面が…旧家に起きた奇怪な毒殺事件の真相に、名探偵エラリイが見出した苦い結末とは?本格ミステリの巨匠が新境地に挑んだ代表作を最新訳で贈る。
著者等紹介
越前敏弥[エチゼントシヤ]
1961年生、東京大学文学部国文科卒、翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
220
やはり面白い。もともとクイーンの中でもかなり好きな部類に入る作品。どこかクリスティっぽいせいか。今作のエラリーには血が通っている。推理マシーンではなく一人の人間として事件の渦中に身を置き、故に感情が眼鏡を曇らせているようにも思え、そこに体温を感じる。"名探偵の活躍を見たい"人にとっては国名シリーズ、"人間の悲喜劇を覗きたい"人ならライツヴィルシリーズなのだろうか。国名好きであれば、今作の探偵役がエラリーである意味がないと感じるのではないか。フーダニットとしてはかなりシンプルで、恋愛模様もチープアメリカ。2016/07/07
紅はこべ
198
旧訳はクイーンで最多再読作品なので、ミステリとしてより普通小説としてこの新訳を読む。特にノーラとジムの心情に寄り添って。これは戦時中に起きたから、或いは戸籍制度のない国だから、成り立った事件なのかな。現在だったら被害者の身許明らかにするよね。真相を明かさぬままということは、ロバータはこれからどうなるの?エラリイという名前、アメリカでは、よくあるのかな。私はクイーン以外で見たことないけど。ロバータも有名記者ならクイーンを知っていそうだけど。粗探しみたいなこと書きましたが傑作です。旧訳も新訳もどちらも良い。2018/06/08
おたま
122
エラリー・クイーンのライツヴィルシリーズ第1弾。一人の妻が夫によって殺害されようとしているらしい。しかし、殺害されたのは別人。今回はエラリーただ一人が探偵役として、事件の解決に乗り出す。これまでのエラリー・クイーンの登場する小説とは異なり、この小説ではただ単なるパズルとしてのミステリーだけに収まっていない。人間の愛情や憎悪、忍耐、絶望、悲劇等が丁寧に描かれている。もちろん最後の謎の解明では、それまで読んでいたことがことごとくひっくり返されていく。しかも、謎の解明自体がさらに奥の深い物語を紡ぎ出している。2020/12/02
星落秋風五丈原
91
父親の警視といる時はいつも「お父さん」と呼びぴしっとしているのに今回単独出演だからなのかエラリイがプレイボーイだ。他に言い寄られる相手がいるパトリシアが自分の正体を見抜いたが早いか速攻アプローチ。えっあなたそんなタイプでしたっけ。大人の男の手管で彼女を探偵の助手に仕立ててしまう。この作品でエラリイが変わってしまった!という感想も散見されたので、違和感は私だけではなさそうだ。原題でもTown=街となっているが、どう考えても特定の家にだけ事件が起こっているので家=Houseが正しかったのでは。 2023/03/23
buchipanda3
86
田舎町ライツヴィルを舞台としたシリーズ1作目長編。事件の背景には田舎町特有の社会性を絡めたり、三者三様の良家のお嬢様が出てきたりと物語性のある人間ドラマで読み応えがあった。終盤にはクイーンによる推理独白も楽しめる。事件の大まかな構図は伏線から朧気にも察しやすい。それでもあの2人の本当の関係が気になるし、展開も中だるみがなく最後までするすると読めた。犯行は偶然性に頼る面もあるが、むしろその大胆さが犯人の感情面の強さが感じられる。他人の気持ちに寄り添い優しい対応をする大人なクイーンがなかなか味があった。2019/05/31