感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tomo
22
ポワロ連作短編集。 ヘラクレスはローマ神話でエルキュールという。 クリスティはこれにちなんで、「ヘラクレスの12の難業」ポワロ版を作ったみたいですね。 凄すぎる。神話を知らないと作れない話ですよね。 私は「アルカディアの鹿」の話が大好きです。 病気になったバレリーナが身を隠す前に、1人の青年に出会い、青年はその女の人を探して欲しいと依頼する。 バレリーナは女中の名前を言ったので、ポワロは探すのに、あっちへ行き、こっちへ行き。最後、ポワロが女の人に希望を託すのが印象的でした。2025/04/17
Ribes triste
19
エルキュール(Hercule)がヘラクレスの仏語読みであることを今になって知る。ポアロがヘラクレスの12の功績に見立てた12の事件を解決する短編集。謎解きについては強引にねじ伏せられてる気がしなくもないが、全体的にライトでコミカルなのが面白い。12の事件もこれまたバラエティ豊か。さすがはクリスティ。一気に読んでしまいました。恋するポアロの姿にほっこりさせてもらいました。2024/08/02
旅人(𝒕𝒂𝒃𝒊𝒕𝒐)
17
再読。ギリシャ神話になぞらえて選ばれた12の事件。神話を知らなくても、この短編集は面白い。意味もなく大勢の人が出て混乱することもないし、事件の種類も様々あるが、事実は「見かけ通りではない」というスタンスの意外性も味わえる。以前の、少し物足りなくて苦手に思った短編集とは満足感が違った。何より好きなところは、全編をとおして、ポアロならではのユーモアがあり、ミス・レモンやジョージもいい感じで登場するし、登場人物達へポアロが親愛を感じる作品もいくつもあって、読後感もいい。2022/12/06
ねこねこ
13
9月15日はクリスティーの誕生日ということで手に取った一冊。ポアロは長編の方が…と思っていたけど、この本はすごくおもしろかった!「おしどり探偵」と同じテーマに沿った連作短編集で、引退してナタウリの品種改良に取り組もうと考えているポアロが、自分の名前にちなんでヘラクレスの難業を辿るように12の難事件を解決していく物語。ハヤカワ・ミステリ文庫では「クリスティー短編集1」なのでこれを選んだんだけど、ロサコフ伯爵夫人の初登場作は「二重の手がかり」で、これは短編集12の「教会で死んだ男」に収録だそう。順番難しい。2024/09/16
星落秋風五丈原
13
この物語は、ポアロが何度目かの引退を口にした事から始まる。 これからはカボチャの改良をして余生を過ごすというポアロに、医師が言う。 「きみの仕事はヘラクレスの難業ではない。愛の難業だ。」 この言葉にポアロは反応する。といっても、「君に仕事は辞められない」と言う彼が言わんとした趣旨ではなく、「ヘラクレスの難業」という比喩にこだわってしまった。本末転倒な話だが、確かに彼がこだわる理由はある。エルキュールをギリシア風に読めばヘラクレス、つまりヘラクレスは、自分と同じ名前の神話上の英雄である。2004/09/26